2015年7月27日以前の記事
検索
インタビュー

Facebook Japan代表に聞く「インスタのジレンマ」 若年の支持獲得か? 規制への対応か?(1/2 ページ)

多くのコンテンツやWebサービスは、ローンチから経た年月の分、ユーザーも年を取り、若者が寄り付かなくなってしまう。しかしこの10年あまり、インスタが若者にとって「定番SNS」であり続けているのはなぜなのか。Facebook Japanの味澤将宏代表に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 Instagram(インスタグラム)が2025年10月、サービス開始から15周年を迎え、同SNSを運営するMetaの日本法人・Facebook Japanの味澤将宏代表取締役がITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じた。


2020年に始めた短尺動画のリール機能は、インスタグラム利用時間のうち50%を占めるまで成長

 今や「インスタ映え」という言葉があるように、インスタは特に若者にはなくてはならないアプリだ。2020年に始めた短尺動画のリール機能は、インスタの利用時間のうち50%を占めるまで成長した。若者は検索をGoogle(グーグル)ではなくインスタで行うなど利用用途も広がっている。

 多くのコンテンツやWebサービスは、ローンチから経た年月の分、ユーザーも年を取り、若者が寄り付かなくなってしまう。しかしこの10年あまり、若者にとって「定番SNS」であり続けているのはなぜなのか。味澤代表に話を聞いた。


味澤将宏(あじさわ まさひろ)Facebook Japan代表取締役。福島県出身。立命館大学経営学部卒業。西オーストラリア大学経営学修士。2000年、オグルヴィ・アンド・メイザージャパンに入社。2008年より日本マイクロソフトにてPCおよびモバイルディスプレイ広告ビジネスを統括。2012年4月、Twitter Japanにセールスディレクターとして入社。2016年11月より上級執行役員広告事業担当本部長および日本・東アジア地域事業開発担当本部長を兼任。2020年1月、Facebook Japanの代表取締役に就任

日本の34歳以下「5割以上が利用」 ティーンを離さない仕組みとは?

 インスタは2010年10月にケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーの両氏が創業し、2012年にFacebook(フェイスブック、現Meta)の傘下になった。


インスタグラムは2010年10月にケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーの両氏が創業

 その後も成長を続け、10月に開催されたインスタのメディア向けラウンドテーブルでは、月間アクティブアカウント数が30億を達成したという。日本市場では2019年に3300万にのぼり、2025年はさらに成長しているとした。


日本市場では2019年に3300万にのぼり、2025年はさらに成長しているとした

 ポーランドのソーシャルメディア統合管理ツール「NapoleonCat.」によると、2024年4月時点で、日本でのインスタ利用者は5534万800人で、人口の44.4%が利用しているという。男女比は男性が41.6%、女性が58.4%だ。最も多い利用者世代は18〜24歳で、全利用者の約26.9%となっており、そこから1490万人のユーザーがいると推計できる。25〜34歳も24.2%が利用しており、18〜24歳と合計すれば51.1%にも達する計算だ。

 野球やサッカーなどスポーツの歴史を見ても、コンテンツの歴史が長くなれば長くなるほど、ファンの年齢層は上がっていく。一方インスタは15年が経過した現在も、依然として若者が使うツールであり続けている。それは、新しい世代の心をつかみ続けているからだ。なぜ可能なのか?

 「将来のユーザーでもあるティーンを大事にしているからです。実は上の世代も伸びていますが、上(の世代)が伸びている時に、下を維持するのが大変です。理由は、お父さん(のような世代)が使うアプリは、(子どもの世代は)使いたくないから」と苦笑しながら語った。若者の立場から見れば納得だ。

 ティーンを大事にするという意味は、単に顧客だから大事にするというだけではないようだ。「ティーンの声を聞きますが、最も重要なのは、安心安全に使ってもらうことです。(ティーンは)まだ社会経験がないので、テクノロジーのリテラシーはある程度あっても、社会的なリテラシーは低いのです。そこをサポートしていくことが肝心です」

成長の秘密:「検索」と「日本文化」

 インスタが成長し続けてこられた理由を、味澤代表は次のように分析する。「日本のユーザーは歴史的に、昔は写メ、今はスマホで写真を撮影してきました。その慣習と、インスタのような写真共有アプリは、文化的にも相性が良かったからです。また、実名のほか、アノニマス(匿名)で登録でき、興味と関心でつながるプラットフォームは日本社会では受け入れられやすいと思います」

 さらに検索も理由に挙げた。ユーザーはグーグルで検索をするのではなく、インスタ内の検索機能を使うのだ。「数年前の数字ですが、1人当たりの検索数は、グローバル平均の5倍に達します。興味や関心のあることに対して積極的に探しにいく姿勢が、日本のユーザーは非常に強いです。AIと検索の相性も良く、インスタの検索も高い精度で画像や動画を探し出してくれます」。AIによるおすすめの精度が向上した結果、インスタの利用時間が6%増加したという。


AIによるおすすめの精度が向上した結果、インスタの利用時間が6%増加

インスタ自体が「昔のWebサイトの代わりに」

 前回、味澤代表にインタビューした時も、ショート動画の「リールが伸びている」と話していた。2024年4月時点で、インスタの利用時間のうちリールが占める割合は50%を占めるまでになったという。1日に利用者がリール動画をDMなどでリシェアする回数は2025年1月現在で45億回。インスタで動画を視聴する時間の伸び率は、前年比で20%増(2025年第2四半期)となった。

 「日本の特徴は、検索からリールを見ている方が多いことです」と話し、ここでも検索が絡むようだ。「関心のあることを検索し、それに合ったリールが出て、見続ける流れとなります。結果的に、滞在時間が伸びるケースが多いのです」

 短尺動画はYouTubeショートやTikTokにもある。違いを聞くと、SNSとして総合力が高いことをアピールした。

 「例えば、TikTokはショート動画に特化して楽しむアプリという感じです。インスタにはリールだけではなく、フィード、ストーリーズ、DMなどがあり、人とのつながりを作る機能が含まれます。アカウントの存在自体も重要で、知り合った時にインスタのアカウントを交換したり、ビジネスでもQRコードを載せてコンテンツに誘導したりします。インスタ自体が昔のWebサイトの代わりのようになっていて、他のSNSとは使い方が違うのです」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る