「管理職=罰ゲーム」とならないために 次世代リーダー育成に必要な「逆転の発想」とは?(2/2 ページ)
近年、管理職への昇進を望まず、専門職としてのキャリアを志向する優秀な若手社員が増加している。彼ら・彼女らが管理職を敬遠する理由は「管理職が『罰ゲーム』と見なされているからだ」と社員教育や採用支援を手掛けるジェイックの近藤浩充氏は指摘する。罰ゲーム化する管理職の現状と原因を分析し、これからの管理職育成に必要な考え方を解説する。
次世代リーダーを育成する5つのアプローチ
管理職の罰ゲーム化を解消し、次世代リーダーを育成していくために、経営層や人事はどうすればいいのか。近藤氏は5つのアプローチを挙げる。
1つ目が対話力と人間関係構築力の強化だ。単なる「会話」ではなく、意見のずれを擦り合わせ、合意を得る「対話」を通じて、部下から「協力したい」と思われる関係性を築く。
2つ目が部下の強みを生かしたマネジメントだ。管理職の成功体験を押し付けるのではなく、対話を通じて部下の強みを見極め、それを最大限に生かすよう育成する。その結果、部下はマネジャーからの指示に対して、業務を「丸投げされた」ではなく「任された」と感じられ、育成スピードが向上する効果が見込めるという。3つ目が役割バランスの最適化だ。部下の成長によりチームの成果が安定すれば、管理職のプレーヤー業務の割合が自然に減り、マネジメントに注力できるようになる。
4つ目が継続的な学習姿勢の醸成だ。管理職自身が「時間がないからこそ、時間を生み出すために学ぶ」という姿勢を持ち、学ぶ組織文化を作る。5つ目が育成内容への変更だ。「新任管理職の成長には、知識だけでなく実践と振り返りのサイクルが不可欠だ」と近藤氏。「インプット中心で終わりがちな管理職研修を、行動変容につながる実践的なものへ変え、再現性を持たせる『逆転の発想』が重要だ」と強調する。実際の職場の課題に取り組みながら学ぶことで、新任管理職はリアルな成功体験を積み重ねられる。
管理職の罰ゲーム化を防ぐためには、これまでの当たり前をなくし、マネジメントスタイルを共創・支援型へと刷新するための継続的なサポートを徹底することが鍵となる。「管理職の重要性を経営戦略として位置付け、経営層が本気で取り組むことが、これからの組織に不可欠な次世代リーダーを輩出する基盤となる」(近藤氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“燃え尽きる”日本の管理職 「これ以上頑張れない」をどう減らすのか
意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失い心身の疲労を感じる、燃え尽き症候群という状態。メンタルヘルス不調の一種である燃え尽き症候群の経験者が、世界中で増加している。
なぜ日本の会社員は「学ばない」のか 個人を責める前に企業が見直すべき組織作りのキホン
米国でCareer Cushioning=企業に勤める人たちが「万が一の解雇」に備え、スムーズに転職できるように勉強すること、が流行しています。一方、日本人の多くは学んでいません。日本人が学ばない背景には、組織の問題が潜んでいるのです。
顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?
米国で最近、「Coffee badging」という働き方が流行っています。出社後、コーヒー1杯で帰ってリモートワークをするというものです。
給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題
「給料は変わらないのに、仕事だけが増え続けている」「役職は変わらないのに、後輩の育成がタスクに加えられた」といったような相談がこの数年で増えています。年齢は30代がほとんどです。ひょっとすると、あなたも似たような状況に陥っていませんか?
