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顧客のメールにAIが返信実行、任せて本当に大丈夫? Gmailでもやらないことを国産法務テックがやるワケ「下書き止まり」ではない(2/4 ページ)

AIが間違った情報を送ったらどうなるのか。不適切な表現で顧客を怒らせたら――? 営業の現場でAIは本当に人間の代わりを務められるのか。LegalOn Technologiesに取材した。

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なぜGmailのAIは「使い物にならない」のか

 AIによるメール作成支援自体は、すでに身近なものになっている。GmailやOutlookには、AIが文章を提案する機能が搭載されている。返信ボタンを押せば「ご連絡ありがとうございます」といった定型文が自動で表示される。

 しかし、多くのビジネスパーソンは、この機能をあまり使わない。吉田氏も同じだった。「Geminiの下書き機能を使ってみたが、使い物にならなかった」。顧客から製品の機能について聞かれても、AIは答えられない。価格を尋ねられても、AIは知らない。企業固有の情報を学習していないAIは、当たり障りのない一般論を返すだけだ。

 DealOn開発責任者の丹野貴顕氏は、その限界をこう説明する。「Geminiは我々の製品を知らないので、答えられない。特に料金なんかは開示していないので」。一般的な知識しか持たないAIでは、企業固有の情報に基づいた返答はできない。

 「下書き」と「自動返信」の間には、大きな壁がある。下書きなら、人間が確認して修正できる。多少的外れな内容でも、叩き台として使える。しかし自動返信は違う。AIが生成した文章がそのまま顧客に届く。間違った情報を送れば、信頼を失う。不適切な表現があれば、関係が壊れる。

 多くの企業がAIに「下書き」までしか任せないのは、このためだ。営業の現場では、顧客との関係は何よりも重要だ。そのコミュニケーションを、AIに丸投げできるのか。

「学習させたもの以外は答えない」、AIの守備範囲

 DealOnは、その壁を越えようとしている。

 顧客からメールが届くと、AIが内容を分析する。製品の機能についての質問か、価格の問い合わせか、それとも複雑な相談か。AIが判断し、答えられる内容なら自動で返信する。答えられない内容なら、営業担当に通知する。


実際のメール返信例(AIアシスタントSela)。顧客からの問い合わせに対し、AIは1分以内に返信している。「小規模企業様向けのGrowthプラン」と具体的なプラン名を挙げ、モジュールやアカウント数の調整が可能だと提案。営業担当が書くような詳細な提案を、即座に返せることがDealOnの強みだ

 AIが答えられる範囲は、あらかじめ決まっている。基本的には製品情報、価格、サポート対応だ。同社は製品情報やFAQなどをすべてAIに学習させた。顧客が「この機能は使えるのか」と聞けば、AIはヘルプページから該当する情報を探し出し、返信する。「料金はいくらか」と聞かれれば、価格表から正確な金額を示す。

 「『AI+固有の情報』をいかに集めて生かすか」。丹野氏はこう説明する。GmailのAIは一般的な知識しか持たないが、DealOnは企業固有の情報を持つ。この違いが実用性を生むという。

 逆に言えば、学習させた固有の情報を越える範囲の質問には答えない。見積書の発行を依頼されてもAIは対応できない。契約条件の交渉を持ちかけられても、営業担当へ回す。

 ただし、単なる情報の伝達だけではない。実際の事例を見ると、AIは顧客の懸念にも対応している。「コスト面で導入が難しい」という顧客のメールに対し、予算に応じてモジュールの組み合わせも可能だと提案する。同社が培ってきた営業のベストプラクティスを学習させているからだ。

 自動返信に抵抗がある営業担当のために、下書きモードも用意した。AIが返信文を生成し、営業担当が確認してから送信する。ただ同社が本命と考えているのは、あくまで自動返信だ。「下書きも必要だが、自動応答が主」と吉田氏は言う。

 11月から始まるクローズドベータでは、まずこのメール自動返信機能を外部企業に提供する。今後は予定調整の自動化など、機能を順次拡張していく方針だ。

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