「ペンギン卒業」の衝撃に埋もれる、Suica改革 JR東日本の挽回には「何が」必要か?(3/4 ページ)
JR東日本が発表した、Suicaの機能を強化する「Suica Renaissance」は「ペンギン卒業」の話題に埋もれてしまった。Suicaの改革に目を向けさせるために、JR東は何をすべきか?
岐路に立たされるJR東日本 今、訴求すべきは?
では、JR東日本は今後どうすればいいのか。いま訴求すべきは、「ペンギンが居なくなるのも当然だ」と感じさせるような「Suicaが変わる必然性」だ。喪失感以上のメリットを示さない限り、いつまでも事態は打開しないだろう。
そもそも、Suica Renaissanceはイバラ道である。すでにキャッシュレスの決済手段はあふれており、とくにコード決済は群雄割拠。これまで「タッチするだけ」でのスムーズな乗車・購買体験が売りだったが、今後は「スマホのロックを解除して、アプリを開き、コード画面を見せる手間」が必要となる。従来のタッチも残るとはいえ、新機能で利便性が改善しているとは言えない。むしろteppayなる新ブランドが加わることで、より難解なユーザビリティーになる可能性すらある。
ペンギンが消えた上に、機能面のメリットもよく分からない……。そうなれば、“Suica離れ”も時間の問題だ。続報として「圧倒的な加盟店数」「ポイント高還元」など、利便性でのアピールポイントが伝わらない限り、ユーザーの印象は「かわいいペンギンを無情にも切り捨てた企業だ」といったネガティブなものになってしまう。
Suicaに独自性をどう加えるか
とはいえ、まったく好印象を得られないというワケではない。現状では「他社に追随するための変更」でしかないが、そこに「Suicaならではの独自性」が加われば、話も変わってくる。
例えばSuica Renaissanceには、Suicaをタッチせずとも、顔認証などで改札を通れる「ウォークスルー改札」(PDF)の導入方針も盛り込まれている。こうした先進性と利便性を兼ね備えた新サービスをうまく訴求できれば、JR東日本にも光明が見えてきそうだ。
その際に欠かせないのが、ネットの声だ。ペンギン卒業を巡っても、その反響の大きさを予期できていれば、事態は変わっていたはずだ。冒頭に紹介したように、新キャラクターについては、ユーザー参加型の選考が予定されている。ここでしっかり「新たなSuicaの方向性」と「それに見合ったブランドイメージ」を訴求できるかが勝負になるだろう。
かつてJR東日本は、山手線の「品川新駅(仮称)」の駅名を公募するも、130位(36票)の「高輪ゲートウェイ」に決定して大ブーイングを浴びた。「民意を無視している」と感じさせると、どんな印象を残すのか。大企業ゆえに、より慎重に消費者とコミュニケーションを取る必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
メルカリ、悪質な転売への対策発表 しかし「手放し歓迎ムード」にならないワケとは
メルカリは悪質な転売への対策を発表したが、SNSでは賛辞以外のコメントも多い。ユーザーが問題視していた転売ヤー対策にもかかわらず、なぜ歓迎ムードが弱いのか?
スシローの注文用ディスプレイ「デジロー」は何がすごい? 大画面に盛り込まれた数々の仕掛け
スシローの店舗で続々導入されている、注文用の大型ディスプレイ「デジロー」。大画面で注文しやすくなったのは言わずもがな、ユーザー体験を上げる細かい仕掛けの数々を見ていきましょう。
「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのか
落とし物は誰にとっても身近なトラブルだが、その回収はアナログで非効率なままだった。そんな市場を15億円規模に成長させた「find」とはどんなサービスなのかというと……。
20年以上の経験がある採用面接官が指摘 「意味のない質問」とは?
面接官は面接で応募者の「何」を見ているのか? 20年以上のキャリアを持つ面接官が指摘する「意味のない質問」とは?

