2015年7月27日以前の記事
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「ペンギン卒業」の衝撃に埋もれる、Suica改革 JR東日本の挽回には「何が」必要か?(2/4 ページ)

JR東日本が発表した、Suicaの機能を強化する「Suica Renaissance」は「ペンギン卒業」の話題に埋もれてしまった。Suicaの改革に目を向けさせるために、JR東は何をすべきか?

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ペンギン続投が難しいワケ JR東日本の狙いは?

 現状では、その問いに対する答えは出ていない。権利問題や費用面でネックがあったのではといった臆測も出ているが、JR東日本は各社取材に対して、否定も肯定も含めて、ハッキリとした回答をしていない。それによりむしろ、人々のモヤモヤは広がっている。

 理由が明確でないのであれば、「卒業撤回の可能性もあるのでは」と考える人も当然ながらいる。オンライン署名サイト「change.org」では、撤回を求める署名が行われ、約2万7000人の賛同を得た(なお、署名募集ページでは、JR東日本側から「Suicaペンギンの卒業の撤回は無い」との回答を得たことが、11月20日付で報告されている)。


署名を募集したchange.orgのサイト(画像:change.org公式Webサイトより)

 消費者の嘆願によって、イメージキャラクターの交代が撤回された事例は、過去に存在する。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」は2022年、公式キャラクターの「ドンペン」を、新キャラクター「ド情ちゃん」に交代させるとSNSで発表。同様に撤回を求める声が相次いだ結果、その日のうちに「私たちが考えている以上にお客様の『ドンペン』への想いを再確認することができました」として、続投が発表された。

 もっとも、このケースは社内統制がうまく取れていなかったため、トップダウンで事態が動いた事案だった。ドンキ運営企業の社長は、騒動の渦中にSNSを立ち上げ、「私も事情がわからず関係部署に確認します」と投稿していた。


ド情ちゃん発表の同日に、ドンペンの続投が決まった(画像:プレスリリースより)

 つまり社内や関係先、作者などの関係各所と、事前調整を重ねたであろう「Suicaのペンギン卒業」とは背景が異なる。しかし、ネットユーザーにとっては「声を上げれば継続してもらえた成功体験」として記憶されており、それが今回にもつながっているように考えられる。

Suicaはどう変わろうとしているのか

 かくいう筆者も「Suicaのペンギン」は大好きで、いくつもグッズを持っている。ただ、残念ながら続投することはないだろう。そう考えるのは、JR東日本は「Suica」の名称は維持しつつも、「ただ単に名前が同じだけの別サービス」に作り替えようとしているのではと感じるからだ。

 先に紹介したように、新たなSuicaは「移動」から「生活」へと軸足を移す。初期からの利用者であれば記憶にあるかもしれないが、Suicaはもともと乗車機能だけだったところに、後から電子マネー機能が追加された。つまり決済は後付けだったわけだ。

 Suica Renaissanceは、この主従を逆転させる方針転換であり、全くの新サービスに挑むような感覚なのではないか。となれば、従来のイメージを払拭するのも不思議ではない。キャラクターだけでなく、今後ロゴマークや配色すらも変わる可能性があるだろう。

 実際にコード決済機能は、別ブランド「teppay(テッペイ)」と名付けられ、モバイルSuicaとモバイルPASMOが連携したサービスとして開始される予定だ。となれば、もはや「Suica」という名称すら、将来的にフェードアウトする方針なのかもしれない。


新たなSuicaの使われ方(画像:JR東日本 プレスリリースより)

 しかしながら、現状の利用者の受け止めを見る限り、「ペンギンショック」が強すぎる。新たなブランドイメージ構築まで、たった1年半では難しいように感じられ、それだけの衝撃を与えると予想していなかったJR東日本の見通しの甘さは否定できないだろう。

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