連載
ReFa「5400円の水」に勝算はあるのか バルミューダ後の“空白市場”をつかむ?(3/3 ページ)
ReFaは高機能・高価格帯のドライヤー、シャワー、美容機器などを展開するブランドで知られる。そんなブランドがなぜ、テクノロジーを一切感じさせない「水」に行き着いたのか。
それでも、5400円の水は本当に売れるのか?
では、ReFaは本当に水を5400円で売ることができるのだろうか。水にまつわる有名な確率論として、「クレオパトラのワイン」というものがある。
「2000年前にクレオパトラが飲んだワインに含まれる水分子は、長い年月をかけて地球全体に拡散し循環している。そのため、今あなたが手にするコップ一杯の水の中にも、確率的には彼女が飲んだワインの水分子が数個は入っている」というものだ。
この話が示唆するのは、分子レベルで見れば、5400円の水も、公園の水道水も、あるいはクレオパトラが飲んだワインを含んだ水も全て、地球を何十億年かけて循環してきた、ただのH2Oに過ぎない。
「70年の濾過」以前に、あなたの口にする水道水も地球誕生から数十億年という悠久のストーリーを背負っているわけだ。
ここで、ReFaが「この水の成分は他社より優れている」というスペック競争を挑めば、直ちにこのような科学的ファクトに敗北するだろう。バルミューダがスマートフォンのスペック表で敗北したように、機能の土俵に上がった時点でブランドはコモディティー化の波に飲み込まれる。
だからこそ、ReFaは「H2O」そのものを売らないのである。
物質としては世界中どこにでもあるH2Oを、いかにして「唯一無二の体験」として定義し、ブランドを守り抜くか。
ReFaの挑戦は、技術立国ニッポンが苦手としてきた「ブランド化」が通用するかどうかの、壮大な社会実験なのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ニデック「特別注意銘柄」の烙印 上場廃止もちらつく中、市場が見据える“再生の条件”
不正会計で「特別注意銘柄」となったニデックに、なぜ投資家は再び買いを入れたのか。暴落からの反発劇の裏には、創業者・永守重信氏の強烈なリーダーシップが生んだ「属人経営」という宿痾がある。市場が賭けるのは、“呪縛”を断ち切り真の組織力を獲得できるかどうかだ。
なぜ人は「うまい話」に群がるのか――「みんなで大家さん」の高利回りは明らかに「持続不可能」だった
年利6〜7%の「高利回り」と「元本割れなし」を信じた投資家たち。だが、その実態は資金の“付け替え”による延命だった。崩れた安全神話が示すのは、個人投資家の危うい「信じたい心理」だ。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
企業にとって残業しない・させない文化の定着は不可欠だ。しかし――。
仕事が遅い部下に“あるテクニック”を教えたら、「チーム全体の残業時間」が3割減ったワケ
仕事の効率化や部下育成に悩む上司やリーダーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。