ReFa「5400円の水」に勝算はあるのか バルミューダ後の“空白市場”をつかむ?(2/3 ページ)
ReFaは高機能・高価格帯のドライヤー、シャワー、美容機器などを展開するブランドで知られる。そんなブランドがなぜ、テクノロジーを一切感じさせない「水」に行き着いたのか。
MTG復活の裏に「ReFa」あり
その受け皿としてMTGは恩恵を受けたのだろうか。
時間軸を少し戻すと、実は同社もかつて苦難の道を歩んでいた。
MTGといえば、サッカー選手クリスティアーノ・ロナウドを起用したEMS機器「SIXPAD(シックスパッド)」が代名詞だった。しかし、ブームの一巡やコロナ禍の影響もあり、同ブランドの成長力には陰りが見えていた。
市場では「MTGは一発屋で終わるのではないか」という懸念がささやかれていた時期もある。
だが、まさにバルミューダがスマホ事業から2024年9月に撤退するのと足並みをそろえるのがごとく、MTGの業績は劇的な復活を遂げた。その原動力が「ReFa」である。
実際に、MTGは2025年9月期の連結売上は988億円と37%の大幅増収で着地した。営業利益は前年比3倍超の106億円となり、その立役者がReFaである。
決算数値を見れば一目瞭然だ。かつての業績けん引役であったSIXPADの売上高は142億円にとどまっているのに対し、ReFaの売上高は728億円だ。およそ5倍の規模にまで膨れ上がっている。
バルミューダが「機能の壁」に跳ね返されている一方で、ReFaはドライヤーやシャワーヘッドといった「機能よりも感覚(髪のまとまりや肌触り)」が重視される領域に攻勢をかけた。こうして企業の屋台骨を太く強靭(きょうじん)なものへと作り変えていったのだ。
「機能しない」最強の商材?
そして今、ReFaが次の一手として選んだのが「水」である。
これには、スマートフォンのような処理速度も画素数もない。型落ちによる陳腐化リスクも、OSアップデートによる不具合もない。あるのは「富士山の永久凍土で70年かけて濾過(ろか)された」という物語を、「どう解釈するか」という主観のみだ。
バルミューダの教訓は、「雰囲気」だけでテクノロジーの不備を補うことはできないが、逆にいえば「テクノロジーが介在しない領域」であれば、純粋なブランドの物語だけで勝負ができるという流れであった。
「70年の歳月」という物語にはスペック競争が介在する余地がなく、ブランドの世界観を100%純粋な形で収益化できる「聖域」ともいえる。
MTGの業績は好調だが、その内実は美顔ローラー「ReFa CARAT」やドライヤーといったハードウェア販売に支えられている。ハードウェアビジネスは、部材費や開発費が利益を圧迫する上、製品の耐久性が高いために買い替えサイクルが長くなりがちだ。
一方で、今回投入された水やインナービューティー製品は消耗品であり、定期的な購入が見込めるという利点がある。業種は異なるものの、アミューズメント大手のGENDAグループが10月に1本数万円の高級ミネラルウオーター「フィリコ・ジャパン」を買収したように、高利益率の嗜好品ビジネスは市場からの注目が高まっている。
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