新人「議事録はAIにやらせました」何がダメなのか? 効率化の思わぬ落とし穴:【2025年メガヒット記事】(4/5 ページ)
新人がAIを駆使すれば効率化できる――はずだった。ところが現実は顧客の信頼を失う危険すらある。便利なはずのAIが、なぜ組織のリスクに転じてしまうのか。
AIを正しく使うための3つの条件
では、AIを正しく活用するには何が必要か。以下の3つが重要だ。
基礎知識の習得
まず対象分野の基礎知識が不可欠だ。議事録なら業界用語や社内用語ぐらい最低限理解しよう。営業なら、商品理解、顧客理解に努めよう。こういった努力なしにAIは使えない。
検証能力(クリティカルシンキング)の習熟
AIの出力を批判的に(クリティカルに)見る目が必要だ。「本当に正しいか」「論理的に矛盾はないか」「現実と乖離していないか」を常に問う姿勢が大切だ。
フィードバックの実施
AIも学習が必要だ。間違いを指摘し、正しい情報を与える。この繰り返しで精度が上がる。しかしもちろんのことだが、知識や経験が豊富でなければAIに対してフィードバックもできない。
この3つの条件を満たさずにAIを使うのはリスクが高すぎる。それらしいスープ料理を作ってもらい、「これがトムヤムクンです」と顧客に提供するのと似ている。これを評価するのは一度もトムヤムクンを食べたことがない人だけだ。それ以外の人は、
「君はトムヤンクンをまるで分かっていない」
と言われ、二度とそのお店に訪れないだろう。
人間にしかできないことは何か?
AIが普及すればするほど、人間の役割が問われる。
AIは大量のデータを処理できる。パターン認識も得意だ。定型的な作業なら人間より速く正確にこなす。では人間の役割は何か。
それは「判断」と「責任」だと私は考えている。
議事録の例に戻りたい。AIが作成した議事録を、そのまま共有していいかどうかは、人間が判断すべきことだ。内容が正確か、機密情報は含まれていないか、関係者全員が理解できる表現か。これらを総合的に判断し、必要に応じて修正する。
そして最終的な責任を負う。これが人間の仕事だ。議事録の作成は単なる「文字起こし」ではない。
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