女性駅員がデジタル人材に転身 JR西、コロナ禍の“危機感”から始まった全社DXの舞台裏(5/5 ページ)
コロナ禍を経て、「鉄道一本足打法ではダメだ」という危機感を持ったJR西日本。デジタル技術を活用した業務変革に取り組む同社には、駅員からデジタル人材に転身した社員も。同社のDX推進の現場を取材した。
DX成功の鍵は「現場経験のある社員」
変革実感率53%という成果を上げた同社だが、今後は70%を目標としている。宮尾氏は今後の課題について2つ挙げる。1つ目は組織間の差だ。「変革実感率を詳細に分析すると、ほとんどのメンバーが変化を実感している組織もあれば、そうでない組織もあり、まだまだ偏りがあるのが実態です。この偏りをなくし、全社レベルでDXを進めるのが、次の目標です」(宮尾氏)
すでに、現場発の変革も生まれ始めている。駅員が自分たちの業務を改善するために、自らアプリを開発する事例も出てきた。こうした成功事例を他の現場にも広げていくことが、変革実感率70%達成に向けた鍵となる。
もう一つの課題は、AI時代への対応だ。「AIにいかに対応できるかどうかが、変革実感率にも関わってくると考えています。そのために、生成AIに関する会社全体のリテラシーの底上げや、経営層へのインプット、必要な環境整備を進めていきます」(宮尾氏)
こうしたDX推進において、野世氏のように現場経験を持つ人材の存在は大きい。古橋氏は「現場経験のある社員は、業務や顧客に関する深い知識を持っています。その視点があるからこそ、本当に現場で使われるシステムやサービスを企画できるのです」と話す。
一方で、DX部門での経験を積んだ人材が将来現場に戻れば、今度はそこでDX推進の担い手になれる。現場とDX、両方を経験することで、どちらの部門でも価値を発揮できる人材へと成長していくのだ。「現場も含めてどんどん挑戦し、変革を進めていく上では、こういった方々は非常に貴重な存在です」(古橋氏)
現場を知り、DXを知る。そうした人材をいかに育て、活躍の場を広げていくか。JR西日本の事例は、全社的な変革を実現する上で、一つのヒントになるのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「仕事は楽な方がいい」 ワイン一筋から「デジタル人材」に大変身 キリンDX道場でベテラン社員が学んだこと
多くの企業がDX人材の育成に課題を抱えている中、キリンHDは2021年から、「DX道場」という独自プログラムを展開。受講者の中には、研究職出身ながら業務自動化ツールを使いこなし、具体的な成果を挙げた例も出ているという。同社に話を聞いた。
きっかけは「やばくないですか?」の一言 アトレのAI活用リーダーが語る、全社を巻き込むコツ
一部の社員だけがAIを使い、組織全体への浸透が進まないという壁に直面する企業も少なくない。そうした中、アトレは3カ月余りでGemini利用率95.5%を達成した。成功の秘訣とは?
年間「7000時間」削減 ファンケル業務効率化の立役者が語る、RPA導入が成功した秘訣
「定型業務を省力化したい」と悩む企業は少なくない。ファンケルは2019年末、RPAツールを導入し、年間7000時間もの業務削減を実現した。導入の経緯や成果を同社に聞いた。
たかが数分、されど数分 接客の大敵「待ち時間」をファンケルはどう解決した?
店舗接客の悩みの種である「待ち時間」。スタッフにとってもお客にとっても、短いに越したことはない。この待ち時間について、ファンケルは徹底した現場目線で解決を図った。
