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年会費9万9000円で「買えないものを買う」 どういうこと? 富裕層カードの知られざる世界「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)

富裕層向け最上位カード「Visa Infinite」が打ち出すのは、“買えない体験”を商品化する戦略だ。限定イベントや特別サービスを通じ、アクセスそのものに価値を持たせる仕組みを読み解き、ポイント経済圏の新たな潮流を追う。

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「買えない」の正体

 そもそも「買えない」とは何だろう。

 世の中には、金を積んでも手に入らないものがある。例えば星の名前。国際天文学連合は命名権を売らない。「夜空は全人類の共有財産」というのが理由だ。古い寺には「秘仏」(仏像)があり、数十年に一度しか開帳されない。拝観料を払っても見られない。見せないことが、価値なのだ。

 では、Visa Infiniteが提供する体験はどうか。

 石川遼とラウンドする機会は、チャリティーイベントや企業の接待枠を探せばゼロではない。トップシェフの料理は、予約さえ取れれば店で食べられる。

 つまり「買えない」のではない。「売っていない」のだ。

 もっと言えば、売り場がない。石川遼とラウンドしたくても、一般向けの“申し込み窓口”は存在しない。星の名前やノーベル賞とは違う。禁じられているわけではない。ただ、アクセスがない。

 Visa Infiniteがやったのは、市場にないものを商品化したことだ。売り場を作った。買えなかったものが、買えるようになった。矛盾は解消された――ように見える。

 だが待ってほしい。

 会員になれば誰でも参加できるわけではない。イベントは抽選だ。年会費を払っても当選しなければ体験できない。「買えるかもしれない権利」である。

 これは、秘仏と同じ仕組みだ。簡単には見られないからこそ、価値が出る。手に入らない“かもしれない”からこそ、欲しくなる。もし禅の師匠がいたら、きっと微笑むだろう。分かったつもりになった瞬間、また新しい疑問が生まれるからだ。

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