なぜエース社員が、たった数百円のために交通費をごまかすのか できる社員ほど陥る心理的なワナ:「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)
空気が緩んだとき、最初に崩れるのは、意外にも優秀な成績を出している人だ。「モラルライセンシング」という認知の歪みについて解説する。
組織として必要な「仕組み」による対策
モラルライセンシングは、意志の弱さの問題ではない。人間の認知のクセであり、誰にでも起こる心理現象である。
私も睡眠時間を確保するというルールを決めているのに、ついつい「今日はいつも以上に頑張ったのだから、夜遅くまでNetflixのドラマを観ていいだろう」と、まるで理屈に合わない判断をしてしまうことがある。そして翌日には「どうしてあんな判断をしたのか」と後悔することになるのだ。
組織として対策をとるべきは、以下の3つである。
- 成果とルール順守を明確に切り離す
- 優秀な人ほど、あえてルールを守る姿勢を求める
- 例外を許容しない空気を組織全体で共有する
どれだけ成果を出していても、ルール順守は例外なく求められる。この原則をあいまいにしてはならない。
また、個人レベルでも対策は可能だ。自分の行動パターンに意識を向け、気が抜けていないか? と気づくことである。具体的には、良い行いをした後に「緩みが出ていないか」を意識的に振り返ってみる。さらに、組織として倫理的な行動の意味を継続的に議論する機会を設けることも有効だろう。
信頼を守る設計が組織を強くする
筆者が講演などでモラルライセンシング効果の話をすると、
「頑張ったのだから、ご褒美ぐらいいいだろう」
「縛り付けるのはよくない」
という声をもらうことが多い。もちろん、そうだ。常に最適解を求めていると、窮屈な感じがする。しかし「ほどほど」にしないと、「ずるずる」いってしまうことになる。
ダイエット目的でどんなに走り込んでも、そのたびに飲んだり食べたりしていたら逆効果だ。走らないほうが健康を保てた、ということになりかねない。
会社に貢献するために頑張ったのに、その見返りを求めすぎて信頼を失っては元も子もない。
そうならないためにも、モラルライセンシング効果について理解を深めよう。人を疑うためではない。人間は誰でも、自分に免罪符を出してしまうという前提に立ち、仕組みでコントロールするのだ。
空気が緩んだとき、最初に崩れるのは、意外にも優秀な人だ。管理のためではなく、信頼を守るための設計だと認識しよう。
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