イマドキの駅ビルにはしない 別府の商店街が、あえて“昔ながら”を貫いたリニューアルの全貌:後編(1/3 ページ)
べっぷ駅市場のリニューアルに際し、JR九州グループは「生活商店街としての再生」を目指した。令和の今では“時代遅れ”とも受け取られかねない「昔ながらの高架下商店街」は、いかにして復活を目指すのか。
かつて「日本一長い」とも言われたJR別府駅(大分県別府市)の高架下商店街。駅改札側は一般的な駅ビルと同様の内装であるものの、駅から離れた街区は個人商店が並ぶ「商店街」となっていた。なかでも「べっぷ駅市場」は昭和の面影を残すレトロ商店街として知られており、観光客の姿も見られていた(関連記事:“良かれと思った施策”が裏目に バブルを生き延びた「べっぷ駅市場」で何が起きたのか?)。
しかし、マイカー客の利便性を図るため、駐車場を増設したことで別府駅改札側と駅市場が分断されることに。さらに、コロナ禍による駅利用客の減少の影響は大きく、空き店舗が増加。商店街は窮地に陥っていた。
そうした中、JR九州グループは老朽化した商店街の再開発を決定。「一般的な駅ビル業態化」や「駅チカ駐車場化」することも可能だったが、商店主らと協議の末、「生活商店街としての再生」を目指すという方針に。2024年に「べっぷ駅市場を未来に繋ぐプロジェクト」が開始された。令和の今では“時代遅れ”とも受け取られかねない「昔ながらの高架下商店街」は、いかにして復活を目指すのか。
「昭和レトロな高架下商店街」としても人気を集めた「べっぷ駅市場」。駐車場増設による駅改札からのアクセシビリティー低下、コロナ禍での空き店舗増加、そして老朽化──レトロ商店街はどう生まれ変わるのか(写真:若杉優貴)
著者紹介:若杉優貴(わかすぎ ゆうき)/都市商業研究所
都市商業ライター。大分県別府市出身。
熊本大学・広島大学大学院を経て、久留米大学大学院在籍時にまちづくり・商業研究団体「都市商業研究所」に参画。
大型店や商店街でのトレンドを中心に、台湾・アニメ・アイドルなど多様な分野での執筆を行いつつ2021年に博士学位取得。専攻は商業地理学、趣味は地方百貨店と商店街めぐり。
アイコンの似顔絵は歌手・アーティストの三原海さんに描いていただきました。
あくまでも「商店街」、中心となる地元の老舗たち
2025年11月、1期リニューアルが完成したべっぷ駅市場を訪れた。11月時点でリニューアルオープンしているのは、べっぷ駅市場のなかでも最も別府駅(改札)寄りにある、かつて「駅市場第一通り」と呼ばれた街区。距離にして約80メートルほどだ。
「市場の顔」ともいうべき駅側の入口には、かつてあったネオンサインをイメージした赤い看板が設置されている。市場内に入ると、古い商店の看板が並ぶ。べっぷ駅市場の特徴の一つが、新装後もこれまで出店していた老舗や地元の店を、大手チェーン店より優先して入居させていること。そのため、すでに顧客が付いている店が大半で、平日でも来街者が多い。
11月時点で駅市場の高架下部分には、期間限定店舗を含む11店が出店。7店はリニューアル前からある店舗で、うち6店は20世紀から営業を続けている老舗だ。また、新規出店した店はいずれも大分県内を拠点としており、昭和時代から続く1店舗が2期開業時に再入居を予定している。
リニューアルしたといえど、駅ビル風ではない狭い街路の両端に店舗が並ぶ商店街らしい形態も特徴の一つ。JR九州は、昔ながらの狭い街路について「売り手と買い手の近さから生まれる濃密なコミュニケーションを生み出すためのもの」としている。歩いて通り抜けようとしても、自然と店の商品が目に入ってくる距離感であり、商店街としての復活を目指すためのこだわりがうかがえる。
一方で、駅市場の内装は以前の白基調から黒基調に。木が多く用いられており、あたたかい雰囲気となった。現時点では真新しいため擬似レトロ感も否めないが、数年経てば味も出てくるだろう。
このように駅市場はあくまでも「個人商店中心の商店街業態」にこだわったわけだが、「商店街のついでにチェーン店にも行きたい!」という地元住民も少なくないだろう。
別府駅にはさらに駅(改札)に近い「えきマチ1丁目別府BIS南館」や「えきマチ1丁目別府B-Passage」などの街区に、地場大手スーパーのマルミヤストアをはじめ、ファストフード店や家電量販店、書店、ベーカリー、カフェ、居酒屋、コンビニエンスストアなどさまざまなチェーン店が出店している。そのためチェーン店に行きたいという需要も取りこぼすことはなく、うまく棲み分けが図られているといえる。
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