“偶然”知り合った人物が実はスパイだった 日本企業の社員を狙うスパイの実態:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
日本企業に勤務していた男性が、ロシアのスパイに社内資料を渡していたとして書類送検された。スパイは巧みに近付いてくるため、誰でも巻き込まれる可能性がある。今回も、これまでに明らかになっている手口と似た方法で、日本人から情報を入手していた。
なぜ企業の情報を渡してしまうのか
スパイはまずターゲットを絞り、その人物の弱みを探り、そこを巧みに突いて情報を提供させようとする。この場合は、金銭がその弱みだったようだ。
またスパイは、弱みそのものを作り出すこともある。最初は資料を持ってきたお礼として、少額でも金銭を渡す。それを受け取ると共犯になってしまい、その関係を切ろうとすると「すでに共犯だ」と脅されることもある。さらに機密情報を持ってくるよう要求がエスカレートすると、お礼の金額も増え、ますます逃げられなくなる。
今回のケースでも、日本人男性は合計70万円をロシア人スパイから受け取っていた。そのお金は、旅行などに使ったという。日本の情報当局関係者は「この人物はロシアの対外情報機関であるSVR(ロシア対外情報庁)のスパイで、通商代表部の副代表だったとみられている」と指摘する。
このケースが氷山の一角だとは言わないが、似たような事件は日本でいくつも起きているだろう。
事実、2020年には通信大手ソフトバンクの元社員が逮捕されている。元社員は東京・新橋で外国人に「近くにいい店知りませんか」と声をかけられ、知り合って食事をする仲になった。最初は会社のパンフレットのようなものを要求され、見返りに金銭を受け取っていたが、最終的にはソフトバンクの5G(第5世代移動通信システム)技術に関する情報を奪おうとした。
この事件でも、新橋で声をかけたのは30代のロシア人で、やはり在日通商代表部に所属する副代表だった(今回の事件とは別人物)。ただ、この人物は本国に帰国し、その後、後任として来日した50代の副代表が、ソフトバンク社員へのスパイ工作を引き継いだ。その後、事件が発覚した。
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