「2026年にキャッシュレス先進国? 難しいだろう」――Visa日本社長が語る"後半戦"の現実(3/4 ページ)
Visaが行ったタッチ決済の普及などを目的とした「大阪エリア振興プロジェクト」は、タッチ決済比率74%、利用者180万人増と全国平均を大きく上回る成果を収めた。今後日本でのキャッシュレス化はどのように進むのか。
日本の決済業界に「ねじれ」はあるか
――ポイント還元で利用が増えても加盟店のコスト負担が残る、不正対策の実装が加盟店に偏るといった構造的課題も指摘されています。韓国や英国などのキャッシュレス先進国と比較して、日本の決済業界でインセンティブがねじれている部分はありますか。
現在の加速ぶりを見る限り、バランスは安定していると考えます。
電子決済のエコシステムは、関係者全員が利益を得られて初めて回るものです。どこかが損をすれば市場はゆがみ、普及の速度は落ちます。決済におけるリスク負担、コスト配分、消費者体験と加盟店の業務負荷――こうした要素が全て絡み合っているのです。電子決済の利点は、コストが明示的で見えることだと感じています。
確かに、日本は韓国など一部の国に比べると遅れていることは、データを見れば明らかです。しかし、現在の日本はかつてないほど速く変化しています。他国の成功事例を観察し、うまくいったモデルを取り入れているのが理由でしょう。
大阪万博後に実施した調査では、消費者の90%がタッチ決済は効率的で便利だと回答しました。また、加盟店の90%が、業務効率が上がりセキュリティも向上したと答えています。利用したことがある人が増えるほど、普及は加速するでしょう。
EC不正との「いたちごっこ」
――非対面のECでは不正被害額が増加し続けています。業界全体でトークン化(カード番号を暗号化する技術)などの対策を進めているものの、セキュリティが厳しすぎると購入離脱につながります。セキュリティ強化と購入体験のバランスを、どのように取るべきでしょうか。
対面取引の不正率は非常に低くなっています。一方、ECの不正率は対面より高い傾向にあります。全体で見れば低い水準ですが、望ましいところまでは下げられていません。
不正は水と同じで、低いところに流れ、最も楽なところを狙います。そのため、暗号化に対応していない加盟店や最新の不正検知ツールを導入していない決済ゲートウェイ(決済代行システム)などに不正が集中しています。
「誰もが不正をなくしたい」と考えているものの、その点を突き詰めてしまうと「最も安全な取引は、取引が起きないこと」となってしまいます。セキュリティを高めるツールはいくらでも入れられますが、手間が増えすぎると、消費者も加盟店も使いたがらなくなります。これにより、取引がなくなっては意味がありません。
だからこそバランスが重要になります。セキュリティツールは裏方に徹し、シームレスに動くようにすべきです。
2026年はECのセキュリティ強化に注力していきます。トークン化を基盤としつつ、AIツールによる不正検知の精度向上、生体認証の導入を進める予定です。SMSで送るワンタイムパスワードより、生体認証のほうがはるかに安全です。パスキー(パスワード不要の認証方式)も有力な手段で、セキュリティを高めながら、取引の手間をなくしていきます。
――現状のバランスは最適でしょうか。
現在は、常に見張っていなければならない状態です。犯罪者も高度化しており、一歩先を行くには、ツールやパラメーターを絶えず微調整し続ける必要があります。
今後はAIの活用で、リスクのある行動パターンを学習し、よりダイナミックに対応できるようになります。不正の検知・予防の精度は上がっていくでしょう。
ただ、こうしたツールは犯罪者側も手に入れられるため、「いたちごっこ」にならないよう、投資し続けていきます。
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