「チラッと見て退店」から脱却 月商3倍を生んだ、ボードゲーム店の空間改革(2/4 ページ)
「毎月50万円ほど赤字だった」という沖縄県の繁華街に立地するボードゲーム店、どのようにして月商3倍を実現したのか?
「今日、遊びたい」需要を狙った観光地への出店
北海道出身の伊東さん、もともとボードゲームは「人生ゲームをやったことがあるくらい」だった。沖縄の琉球大学在学中に、ボードゲームのメッカであるドイツ発祥の名作「スコットランドヤード」を量販店で購入。「作品名を聞いたことがあって、気になっていた」という些細(ささい)な理由だった。
大学の友人たちとやってみると、これが面白かった。1人の犯人が多数の警察官から逃げる頭脳戦。とはいえ、将棋やチェスのように実力差が如実に出るわけでもない。「みんなで遊び方を調べて、ゆっくりしゃべりながらできるのが楽しかったんです」。これを機にカード系や盤上のゲームなど100種類ほどを収集。近隣のライブハウスでボードゲームイベントも主催した。
卒業後、博物館や印刷会社などで3〜4年働いた後、2013年ごろに那覇市の住宅エリアに「サイコロ堂」の1店舗目を出店した。20坪で月5万円の格安物件を活用し、料金はフリータイムで500円。飲食も提供してはいたが、「文化を広めたい」という思いを優先し、ほぼ採算度外視の運営だった。
しかし、コロナ禍の巣ごもり需要でボードゲーム人気がにわかに高まり始めると、ある思いが芽生える。
「昔は個人経営のファミコンショップが各地にありましたが、大型店の台頭で一気に減りました。流行りの業界にはいつか大資本が入り、小さい店舗は淘汰(とうた)されていきます。それと同じ運命はたどりたくない。生き残るためには、自分も変わらないといけないと思いました」
事業として成長させていくため、次の一手として打ち出したのが、2店舗目の「サイコロ堂シーサイド」である。那覇店とは異なり、ホテルが林立する繁華街への出店。若者を中心に地元客も多い。車社会の沖縄では数少ない、多くの人が街歩きを楽しむエリアだ。
地元客に加えて狙ったのが「今日、遊びたい」という観光客の需要だった。大型店や通販での販売が強くなるほど、対面小売の価値は相対的に下がってしまう。一方で旅先の夜、あるいは悪天候時の「いま欲しい」「いま遊びたい」というニーズは、オンラインでは代替しにくい。車でのアクセスが必要になる大型店も同様だ。
実際、持ち運びがしやすい小箱を中心に、家族連れや修学旅行生から「ホテルで遊ぶ」という需要はあった。しかし、安定運営に直結するほどのインパクトはなかった。興味を持って店に立ち寄る人がいても、なかなか消費につながらない。販売、プレイスペースともに伸び悩み、オープン後の1年間は毎月50万円以上の赤字が続いた。
どこに打開の糸口を見いだすか。試行錯誤が始まった。
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