採用AIという「見えない裁判官」 その判定に理由はあるのか:集中連載「AIと人間の境界線」(1/3 ページ)
カフカ『審判』になぞらえ、採用AIの判定の不透明性を問う。EUのAI規制や国内事例を踏まえ、日本企業が直視すべき人事とAIの設計責任を考察する。
カフカの小説『審判』で、主人公ヨーゼフ・Kは、ある朝突然逮捕される。罪状は告げられない。裁判官は見えない。彼は「なぜ裁かれているのか」を最後まで知らされないまま、処刑される。
これは不条理文学の古典だ。だが、もはや笑い飛ばせない時代が来ている。
2021年、米国のAI面接プラットフォーム、HireVue社は「表情分析」機能を廃止した。応募者の表情・声のトーン・語彙(ごい)をスコア化し、合否に関与させていたシステムだ。
廃止の理由は単純だった。「なぜ不合格なのか」を採用企業が説明できなかったからだ。判定は下るが、根拠は見えない。ヨーゼフ・Kの裁判は、21世紀の採用現場に実装されていた。
同じ技術が、日本の採用現場にも静かに浸透している。ROXX社(東京都新宿区)が提供する「ZキャリアAI面接官」は、応募者の表情・声を解析し、企業が設定した「理念キーワード」への合致度をスコアとして数値化する。
ZENKIGEN社(東京都港区)が手掛ける「harutaka」は、同社が蓄積してきた1500万件超の面接動画データを基盤に、表情や発話パターンを解析する。人事採用領域では、神戸大学との共同研究も進めている。
DuDo社(東京都豊島区)が展開する「DuDo AI面接」は、AIアバターが「応募者の緊張を和らげ、本音を引き出す」ことを設計意図として明示する。
だが、改めて問わなければならない。笑顔度・承認度・傾聴度――その指標を選んだのは誰か。その選択自体が、すでに価値判断だ。「理念キーワード」は誰が設定し、何を静かに排除しているか。「本音を引き出す」アバターは、候補者から何を引き出し、何を収集しているのか。
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