中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実(4/5 ページ)
大企業の早期退職募集の波が広がりを見せている。申し込みシニア社員も多いようだが、中小企業への転職は簡単ではない。構造的なギャップを解説する。
「大企業と中小企業の共通点」ほぼないに等しい
大企業出身者が中小企業に転職しても、1年以内に辞めてしまうケースが後を絶たない。当社ではこれを「中小企業アレルギー」と呼んでいる。
大企業と中小企業では何が違うのかと聞かれれば、「ほぼ全部」としか答えようがない。
人材の質が違う。資料もマニュアルもそろっていない。残業代が出ない。PCは全員バラバラで、クライアントを迎える打ち合わせスペースも空きがない。
大企業では当たり前だったものが、ことごとく存在しない世界である。100個比較したら、大企業と中小企業で共通するのはせいぜい5個くらいしかないだろう。
さらに厄介なのは、中小企業特有の変化のスピードだ。
生き残りに必死な中小企業では、業務内容が毎月のように変わるケースも珍しくない。12月に「営業部長として5人の部下をマネジメントしてほしい」と言われて4月に入社したら、「営業社員が3人退職してしまった。残った2人のマネジメントと、自ら営業をやってほしい」ということが平気で起こる。
大企業では起こりにくい、こうした変化に適応できず、アレルギー反応のように拒絶してしまうのが早期離職の正体である。
転職後に「大企業の30年が特殊だった」と悟る
1社目を中小企業アレルギーで退職したら、その後どうなるのか。
大企業には戻れないので、結局は別の中小企業に転職することになる。半年ほどのブランクを経て、やっとの思いで2社目に入ったとき、2つの変化が起きる。
1つは現実的な制約だ。「これを辞めてまた無職の期間が続いたら、60代半ばになってしまう。もう辞められない」という切迫感が生まれる。
もう1つは、認識の根本的な転換である。2社目の中小企業も、1社目と何も変わらない。「中小企業はどこもこうなんだ。自分が生きてきた大企業の30年間が特殊だったんだ」と、この認識に到達して初めて、新しい環境を受け入れられるようになる。
言い換えれば、この気付きを転職「前」に持てるかどうかが、1社目での生存率を大きく左右する。「諦め」ではなく「理解」として、大企業の外の世界を事前に知っておくことが決定的に重要なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SNSでオモチャ化する「謝罪会見」 プルデンシャルは何を読み違えたのか
近年、謝罪会見がSNSでオモチャにされている様子をよく目にする。1月23日に実施された、プルデンシャルの謝罪会見も例外ではない。同社は何を読み間違え、SNSでオモチャとして扱われてしまったのか。
負債2億円から売上35億円へ 「自分の代で潰す」と決めた二代目の“悪あがき”が最強のチームをつくり出すまで
2億円の負債を抱えるかもしれなかった状況で家業を継ぎ、”悪あがき”を重ねて売り上げ35億円を達成した清松総合鐵工。どのような改革を経て、V字回復を実現したのか。
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
年商54億円企業を「突然」継いだ兄弟 役員・社員が辞めていく中でも改革を続けたワケ
2023年12月、不動産会社のハタスで衝撃的な事業承継が行われた。当時、20代前半の兄弟が年商54億円の会社を突然継ぐことになったのだ。自分たちなりに改革を進める中で、役員や社員の退職も起こった。それでも改革を続けた2人の経営論を取材した。
「予約を全て止めてください!」 老舗酒造で起きたミスから生まれた「日本酒」なぜヒットしたのか?
300年続く酒蔵の「特別な日本酒」を襲った製造ミス。廃棄ではなく「正直に出す」ことを選んだ結果、失敗は物語となり、そこから想定外のヒット商品が生まれた。