1000社が集う巨大起業拠点「STATION Ai」 変革を急ぐ製造業の生存戦略
2024年10月に名古屋市内で開業した日本有数のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」。十六フィナンシャルグループから出向するコミュニティマネージャーに、STATION Aiのオープンイノベーションの実態と、地域経済への貢献を聞いた。
2024年10月に名古屋市内で開業した日本有数のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」。地上7階建て、延べ床面積約2万3000平方メートルという東京ドームの約半分に相当する巨大な施設に、開業時点でスタートアップ約500社、事業会社などのパートナー企業約200社が集結した。2026年3月時点で会員社数は合計約1000社を超え、月間の平均入退館者数は延べ5万3000人だという。
愛知県によるスタートアップの創出・育成を目指す「Aichi-Startup戦略」の中核拠点であるSTATION Aiは、ソフトバンクの完全子会社であるSTATION Ai社が運営を担っている。製造業が集積する東海エリアに根ざした同拠点の目的は、スタートアップと大企業によるオープンイノベーションを通じた新事業の創発だ。
同拠点のコミュニティ運営には、金融機関からの出向者も携わっている。その一人が岐阜市の十六フィナンシャルグループから出向するコミュニティマネージャーの唐木遥香さんだ。唐木さんにSTATION Aiにおけるオープンイノベーションの実態と、地域経済への貢献を聞いた。
唐木遥香 立命館大学卒業後、十六銀行に入社。法人営業を経験後、NOBUNAGAキャピタルビレッジの設立メンバーとしてコミュニティ形成を行う。その後、十六フィナンシャルグループ グループ企画統括部 兼 十六銀行 経営企画部に配属。2024年4月よりSTATION Aiに参画(出向)。コミュニティマネージャーとして、自走するコミュニティを目指し活動。また、愛知県が主催、STATION Aiが運営する社会人向け起業家/新規事業創出プログラム「ACTIVATION Lab」の運営責任者として、起業家や新規事業の創出に貢献(STATION Ai提供写真)
日本最大規模の箱 製造業の集積が生む熱量
――STATION Aiには既に多くの企業が入居しています。STATION Aiの強みや特徴はどんな点にありますか。
強みはやはり自走するコミュ二ティだと思っています。特徴はいくつかあります。1つ目は、日本最大規模の「箱」であるという点です。延べ床面積でいうと東京ドームの約半分という広大なスケールで、これだけの施設が名古屋市にあること自体が、大きな強みです。
2つ目は、この東海地域の特性でもある製造業が集積している点です。日本を代表する企業をはじめ、モノづくりを担う企業や、工場の製造ラインに向けたサービスを展開するスタートアップなど、製造業を中心に多くの企業が集まっています。STATION Aiの最大の目的はオープンイノベーションによって新たな事業を創発することです。大企業の新規事業担当や工場担当など「新しい何かを作りたい」というマインドを持った方々が、入居しています。
――開業から1年半ほどたちました。入居企業と接していて、勢いや変化を感じることはありますか。
2024年10月の開業当初と比べると、他社と接するのが非常に上手になったと感じています。最初は「どうしたらいいんだろう」という戸惑いもあったかと思いますが、今では知らない人を見かけたら、まずあいさつをする文化が根付いています。
これはSTATION Aiの非常にユニークな点だと思います。また、会員が入れるオンラインのコミュニティツールがあるのですが、そこで直接DMを送ってコンタクトを取るような動きも活発です。「初めまして」という声の掛け合いが起こるスピードも早くなりましたし、そこから実際の事業連携に至るまでのスピードも、確実に上がってきている印象があります。
銀行員が出向して挑む「自走するコミュニティ」
――唐木さんはSTATION Aiのコミュニティマネージャーとして、普段どのような業務に携わっているのでしょうか。
事業の連携や成長に向けて、入居企業さん同士をつなぐマッチングの役割をしています。これに加え、コミュニティそのもののデザインにも携わっています。
STATION Aiが目指しているのは、自走するコミュニティです。私たち運営側が全てに介入しなくても、会員が主役となってコミュニティを作り上げ、そこで事業の連携や成長が自然と生まれる環境をイメージして、デザインしています。
最終的には、私たちコミュニティマネージャーがいなくても、会員同士による事業連携や成長が自発的に作られていようなコミュニティにしたいと考えています。
私は十六フィナンシャルグループからの出向社員です。STATION Aiは基本的にソフトバンクからの出向者が多いのですが、私のように金融機関から来ているメンバーもいます。毎日STATION Aiに常駐する形で業務にあたっています。
危機感を抱く大企業が求める「共創」の場
――STATION Aiは2024年10月から稼働しています。唐木さんはいつから参画していたのですか。
施設が完成する前の2022年4月に、ソフト面でスタートアップを支援する取り組みとして「PRE-STATION Ai」が始まりました。PRE-STATION Aiではスタートアップに多様な支援をしてきました。施設の完成後はスタートアップやパートナーへの支援に加え、オープンイノベーションの推進を担う現在の形へと発展してきました。私自身はグランドオープン前の2024年4月から、STATION Aiに出向しています。
現在は自動車産業を中心とした製造業の大手企業が多く入居しています。一方で、自動車関連以外の、全く異なる事業領域の企業も多数入居しています。
――大企業は、STATION Aiに何を期待して集まっているのでしょうか。
自動車産業も含め、今は産業全体が大変革期にあると言われています。今の事業をそのまま続けていくだけでは、10年後どうなるか分からないという危機感をお持ちです。そんな今だからこそ、次世代の新たな事業を作りたい狙いがあります。自分たちだけではなく、スタートアップや他の事業会社の力も借りながら、共に新しいものを生み出す「共創」を期待して入居する企業が多いですね。
TechGALA Japan 2026のニッポン放送 ポッドキャスト番組「宇垣美里のスタートアップニッポン powered by オールナイトニッポン」の公開収録に登壇した唐木遥香さん(右)。左は株式会社BeLiebe代表取締役CEO・志賀遥菜さん:TechGALA提供写真)
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