1勝15敗で、なぜ生き残れたのか アキッパの「やめる」意思決定:「撤退」の論理(2/4 ページ)
事業をやめる判断は難しい。アキッパは17事業中15を撤退し、ほぼ1つに集中した。1勝15敗ともいえる歩みの中で見えてきた、やめることで勝ち筋を見つける経営とは何かを追った。
困りごとを解決できるかどうか
アキッパの歴史を振り返ると、創業当初は「なんでもやる会社」だった。2009年に営業代行からスタートし、スポーツバー、モバイルショップ、求人サイト、メディア、イベント……。思いついたらすぐにやる、という感覚に近かった。売り上げを伸ばすことを優先し、「何のために、この仕事をしているのか」は後回しになっていたのだ。
同社の金谷元気社長に、印象に残っている事業を聞いてみた。すると、「成果型アルバイト求人サイト」(2012年開始)という答えが返ってきた。企業は掲載料金が無料で、1人採用が決まるごとに3万円を支払うビジネスモデルだ。当時、リブセンス(東京都港区)の成果型求人サイトが話題を集めていたので、「ウチの会社もチャンスがあるのではないか」(金谷社長)と考えていたそうだ。
営業部隊が企業を回り、クライアントを次々に獲得していった。しかし、である。同社にとって「応募者を集める」という業務は初めてであったこともあり、想定以上に苦戦した。結果、4年でサービスを終了。「いま振り返ると、もう少しうまくできていたのではないかと思う。ただ、当時は資金面の余裕がなく、残念ながら事業を撤退した」(金谷社長)
アキッパにとっての転機は、2013年に訪れる。それまで「売り上げを伸ばす」ことを優先していたが、ここで「困りごとを解決する」方向へと舵(かじ)を切る。
その背景には、課題をマトリクスで整理して考えるやり方があった。縦軸に「解決が難しいかどうか」、横軸に「困っている人が多いか少ないか」を置き、その中でも「困っている人が多く、しかも解決が難しい領域」を狙う。これによって、新規事業は思いつきではなく、「困りごとを解決できるかどうか」を考えて選ぶようになっていった。
この変化は、始め方だけでなく、やめ方にも影響を与えた。2016年、同社は大きな決断を下す。ほぼ全ての事業から撤退したのだ。求人、美容師向けサイト、営業代行……。中には利益が出ているものもあったが、それでも手放した。理由は1つ。2014年にスタートした「アキッパ」に、すべてのリソースを集中するためである。
いわゆる「選択と集中」だ。言葉にすればシンプルだが、実際にやるのは簡単ではない。特にスタートアップにとって、黒字の事業は大事な収入源でもある。それでも同社は、これから伸びると考えた事業に絞った。当時のことについて、金谷社長は「撤退の寂しさを感じる余裕すらなかった」と振り返る。
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