1勝15敗で、なぜ生き残れたのか アキッパの「やめる」意思決定:「撤退」の論理(3/4 ページ)
事業をやめる判断は難しい。アキッパは17事業中15を撤退し、ほぼ1つに集中した。1勝15敗ともいえる歩みの中で見えてきた、やめることで勝ち筋を見つける経営とは何かを追った。
実証実験がうまくハマった
では、なぜアキッパは駐車場シェアリングサービスを「残すべき事業」と判断したのか。サービスを始めた当初、駐車場は約700台分しかなく、初月の売り上げはわずか2万円だった。どのようにすれば、利用者数を伸ばせるのか。さまざまな手を打っていく中で、ある実証実験がうまくハマった。
大阪環状線の内側で、駐車場を集中して設置するのはどうか。いわゆるドミナント戦略である。250メートル四方ごとに駐車場を1台確保したところ、どのような結果になったのか。「大阪のこのエリアに行けば、クルマを停められる」と認識するユーザーが増え、売り上げがどんどん伸びていったのだ。
駐車場の数が増えれば、ユーザーが増える。ユーザーが増えれば、オーナーが集まる。いわゆるネットワーク効果(サービスの価値がユーザー数に比例して増加する現象)だ。ドミナント戦略は大阪だけでなく、他の都市でも導入したところ、同じようにユーザー数が増えていった。
個人的に興味深く感じたのは、その後の展開である。この市場には、楽天、リクルート、NTTドコモ、ソフトバンクといった大企業が参入した。しかし結果として、多くが撤退している。理由はいくつか考えられるが、共通するのは「やり切る前に見切った」ことだ。
たくさんの事業を抱える大企業では、一つに割けるリソースは限られる。ネットワーク効果が立ち上がる前に、撤退の判断を下したので、「駐車場数とユーザー数の相関関係」を十分に確認できないまま終わった。
一方のアキッパは、粘り続けた。駐車場のオーナーに、自社のサービスを紹介しなければいけない。そのためには、自宅のチャイムを押して、話を聞いてもらわなければいけない。時代に逆行するかのような営業で駐車場を開拓し、ドミナント戦略でユーザーを増やす。そうした泥臭い積み重ねが、結果として差を生んだ。
さらに、副産物もあった。大企業が参入したことで、「駐車場をシェアする」というサービスそのものの認知が広がったのだ。
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