不動産事業を売却したサッポロビール「背水の陣」 “新商品に頼らない”勝ち筋とは?(2/2 ページ)
2025年12月、サッポロホールディングスは不動産事業を約4770億円で売却すると発表した。不動産事業を手放した今、既存ブランドでいかにして生き抜こうとしているのか。ビール専業メーカーとして歩み出したサッポロビールの生存戦略を、坂下聡一マーケティング本部長へのインタビューからお届けする。
RTD戦略 ポッカサッポロの「レモン」という資産をどう生かすか
ビール事業への集中と並行し、成長市場である缶チューハイなどのRTD(Ready To Drink)やノンアルコール市場においても、独自の視点での開発を進めている。
2月25日には、ミズノと共同開発したノンアルコールビールテイスト飲料「SUPER STAR」を近畿圏限定で発売した。「スポーツや筋トレの後はビールを飲みたいが、アルコールは控えたい」という消費者の声に応えたものだ。坂下氏は「酒を飲まない層も増えており、ノンアルコール市場はRTD同様に成長が期待できる」と分析する。近畿での販売が成功すれば、全国展開も見えてくるだろう。
マクロミルの調査(2025年6月発表)によれば、RTD市場の2024年の購入金額は2015年と比べて194%増と、直近10年で実に約2倍に成長している。この市場において、サッポロは「後発組」としての戦い方を模索している。
「RTD市場の中心はレモンフレーバーですが、グループ内には『レモン』を有するポッカサッポロという強力なアセットがあります。現在はまだその強みを十分に生かしきれているとは言えません。今後は、ポッカサッポロの持つレモンの知見とサッポロのお酒づくりのノウハウをより密接に結び付けた商品開発を強化していきます」(坂下氏)
その言葉を裏付けるように、3月17日には「サッポロ 飲みごたえ<超無糖>レモンサワー」「同 グレフルサワー」を全国で発売した。グループの資産を再統合し、先行する競合他社に対抗する構えだ。
AIは「分析」の手段 最終判断は「人間」が担う
デジタル技術の活用についても、サッポロビールは独自の距離感を保っている。商品開発や販売の現場におけるAI活用には明確な「メリハリ」をつけているという。
「環境分析などの開発プロセスにAIを組み込んでいる部署もあれば、個人の業務効率化に活用している社員もおり、状況はさまざまです。膨大なデータの分析や情報の集約において、AIのスピードは非常に優れています。しかし、AIから出る情報を鵜呑みにすることはできません。その情報が何を意味するのかを読み解き、最終的にどのような一手を打つべきかを判断するのは、あくまで人間の役割だと考えています」
坂下氏自身、これまで数々のヒット商品を生み出してきた開発のスペシャリストだ。2013年にはプリン体0.00を実現した発泡酒「極ZERO」、2014年にはベルギーのホワイトビールにヒントを得た「ホワイトベルグ」、2015年には特定保健用食品(トクホ)初のノンアルコールビールテイスト飲料「SAPPORO+」と、市場に新風を吹き込む商品を世に送り出してきた。
不動産事業という安定した収益源を切り離した今、サッポロに求められるのは純粋な商品力と、それを届けるマーケティングの精度に他ならない。専業メーカーとして歩み出した同社の駆動力は、かつて自らヒットを連発した坂下氏が指揮する「新しいビール体験」の創出にかかっている。
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