新リース会計基準の準備、どこまで進んでいますか? 各社の状況と対応策を徹底解説
2027年4月から「新リース会計基準」が適用される。オンバランス化で償却処理が複雑化してExcel管理は限界を迎えるとされる中、企業はどのような準備をすべきだろうか。PCA主催のオンラインセミナーから、準備の具体策や留意点をレポートする。
2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用される「新リース会計基準」。適用まで残り1年余りになって、多くの企業が対応を急いでいる。新基準によってリースが「オンバランス(資産扱い)」になると、会計上の減価償却計算も必要になる。減価償却は複数年にわたって継続する処理であるため、Excelでの管理はいずれ限界が来ると予想されている。
そうした中、PCA主催のオンラインセミナー「新リース会計基準の導入準備、どこまで進んでいますか?」が2025年12月3日に開催された。当日は太陽グラントソントン・アドバイザーズの武藤敦彦氏(パートナー・公認会計士)と松永直樹氏(シニアマネージャー・公認会計士)が登壇して、各社の対応状況や対象取引の調査ポイント、実務上の留意点について詳しく解説した。本稿ではその内容をレポートする。
実態調査から見えた現場の課題
冒頭、参加者に新リース会計基準の準備状況を問うリアルタイム投票が実施された。結果は「経理財務部が準備して対応中」が53%、「全社的に対応中」が7%、「外部コンサル活用」はわずか1%だった。「その他」が40%を占めており、経理以外の部門が対応を進める企業も多いことがうかがえた。
プロジェクトメンバーの配置は「専任」が1%にとどまっており、「日常業務と兼務」が78%に上った。武藤氏はこの現状について「月次や四半期決算に追われながら、兼務で新リース対応を進めている企業が大半です」と現場の苦労を指摘した。
続いて松永氏は、PCAが2025年7月に実施した「新リース会計基準に関する実態調査」(国内上場会社の会計責任者ら110人対象)の結果を紹介した。
現在の固定資産管理ツールは、53.6%が「Excelや表計算ソフト」と回答。管理対象のリース資産数は、38.9%が「1000件以上」と回答した。今後の管理ツールは「新しいリース管理ができる固定資産ソフトを導入する」が73.3%だった半面、47.5%が「Excelや表計算ツールを使う」と答えた。複数回答であることから、システムとExcelを併用する企業も多いとみられる。
松永氏は「10〜20件程度ならExcelでも管理できるでしょう。しかし対象が50件以上になったり契約変更に伴う『リースの見直し計算』が発生したりした場合、情報を更新して再計算するのは大きな手間です。Excel管理のままで変更対応までやり切れるか、考えていただくのがよいと思います」とアドバイスした。
導入準備の懸念点は、60.9%が「リース契約データの収集やリース判定が煩雑で時間がかかる」と回答した。組織面の課題には、41.8%が「リース契約の情報確認のための横断的な連携」を挙げた。3月決算企業を中心に「時間的に余裕がない」との声も目立った。準備状況は、61.3%が「リース契約内容の精査を進めている」として、59.4%が「新しいリース管理システムの導入を検討・準備している」という。
興味深いのは、45.8%の企業がリース契約を「購入契約に切り替える方針」と回答した点だ。武藤氏は「オンバランス化で資産扱いになり、管理が大変になるなら『購入しても同じではないか』と考える企業が多いのは理解できます」と述べた。松永氏も「資金面や管理面での追加負担を勘案しながら決定するのがよいと思います」と助言した。
会計データから網羅性を担保する経理主導のアプローチ
松永氏は、リース契約を網羅的に把握するためのアプローチには「経理主導(トップダウン型)」と「現場主導(ボトムアップ型)」があると説明した。
新基準の導入で最もハードルが高いのは「リース契約に該当するものを全て把握できているか」という網羅性の担保だ。松永氏は、会計数字からアプローチする「経理主導」の3つのステップを解説した。
ステップ1は、試算表からの勘定科目の絞り込み。全ての科目が対象になるわけではなく、「地代家賃」や「支払手数料」など“隠れリース(実質リース)”を含む可能性が高い費用項目を絞り込む。役員報酬などは調査対象から除外できる。
ステップ2は、総勘定元帳をドリルダウンした、実際の取引内容の確認。地代家賃なら本社家賃や支店家賃、支払手数料ならシステム利用料といった項目ごとに調査対象か否かを判断する。
ステップ3は、追加調査する取引の契約書を参照して、リースに該当するかどうかを判定する工程。「特定の資産か」「使用する権利を支配しているか」といった判断基準に照らして判定する。
実務上のポイントは3つある。「識別の網羅性の担保」「調査の過程や判断根拠の社内文書化(事後トレース可能にすること)」「調査範囲やアプローチに関する監査法人との事前擦り合わせ」だ。
経理主導アプローチのメリットは、経理部門内で情報のキャッチアップと契約把握が完結する点だ。早い段階から検討できて論点の当たりを付けやすく、準備時間も確保しやすい。デメリットとしては、企業規模が大きいと仕訳本数が膨大になり分析負荷がかかることや、子会社や拠点によって仕訳のやり方(起票単位など)が異なると統一的な取引の抽出が困難になること。会計記録や契約書だけでは取引実態が分からないことなどがある。
留意点として、松永氏は「M&Aで買収した会社などがある場合は、事前に仕訳の社内ルール(統一方法)を確認しておくべきです。部門別の案分仕訳などが混ざっていると総額が把握しにくいので注意が必要です」と助言。経理だけでは判断できない部分は、後述する「現場主導」のアプローチとの組み合わせが重要だと強調した。
質問票で実態を把握する現場主導のアプローチ
現場主導のアプローチは、質問票(調査票)を現場に配布して情報を集めるところから始める。質問票には一般的な項目に加え、部門特有の取引も含める。「製造業の金型や外部から借り受けた特殊な機械など、部門特有の事項も回答してもらえる指示が必要です」(松永氏)
識別のための重要な判断根拠も含める必要がある。「支配権」「経済的利益」「指図権の有無」といった専門用語ではなく、「100%自由に稼働させていいか」「誰が決められるか」といった現場が理解できる言葉で判定してもらう形式が有効だという。
現場主導のメリットは、経理部で把握できていない契約(取引を含む)を洗い出せる点や判断根拠の情報(リース期間、使い方など)を一挙に入手できる点にある。デメリットとしては、現場の回答精度にばらつきが出ることや現場が持つ情報が限定的な場合があること。項目を増やし過ぎると現場に負荷がかかって精度が落ちることや回答の再依頼といった追加調査が発生することなどが考えられる。
松永氏は「難解な言葉は避ける」「現場は支払いベースで考えがちなので、税込みと税抜きの表記を明確にする」「事前の勉強会や質問票のカスタマイズで“具体的な指示”を出す」ことを推奨した。また、「リース識別に必要な情報がなければ最終的な判断はできないため、経理部などの知見者が内容を確認するフローを入れます。質問票の配布を段階的にして、1段階目は軽い領域、2段階目は識別に必要なところだけを聞くといった工夫も有効です」とアドバイスした。
松永氏は「連結企業や複数拠点を持つ企業は、会社ごと、拠点ごとにどのアプローチを取るかの事前整理が必要です。財務的な割合(定量情報)が大きいのはどこかを見極め、定性的な部分も加味して調査対象会社や科目を絞り込むアプローチが大事です」と補足した。これらを踏まえ、武藤氏は「経理主導と現場主導の合わせ技」の重要性をあらためて強調した。
契約情報の読み取り方とAI利用の“落とし穴”
契約書から把握する情報として、松永氏は「契約の種類、目的、内容」「契約期間、途中解約の可否、違約金の有無」「リース料(報酬額など)の判断」を挙げた。
ここでのポイントは4つだ。
- 識別や会計処理のために把握する情報は広範である
- 契約書の情報だけではリース識別ができないケースが多いため、不足分は現場に確認すること
- 原則全ての契約を確認する
- 実務負担を考慮して、重要な契約をある程度絞り込む、類似取引はグループ化して確認するといった工夫も必要
セミナーでは、契約書の自動読み取り機能「AI OCR」も議論に上った。AI導入のメリットには、手入力の自動化を通じた業務効率化、ヒューマンエラーや属人化の防止、データベース化による管理・保管コスト削減、他システムとの連携やデータ分析の容易さなどがある。
ただし、AIには導入・運用コスト、読み取り精度の限界(古い契約書は書式が不統一、手書き混在など)、セキュリティリスク、例外対応のルール決めといった課題があることも忘れてはならない。武藤氏は「最終的な目視確認は必須です」と強調して、AI任せにはできないことを説いた。
自社の影響度を把握するには? 新基準対応への「現実解」
最後に松永氏はPCAの無料ツール「PCA新リース会計基準 影響額試算ツール」を実演した。契約情報(リース期間、支払開始日、月額リース料、前払いの有無、残価保証の有無など)を入力すると、自動でオンバランス額などが算定される。
契約期間を変更してのシミュレーションも可能だ。「仮にリース期間が10年と判断され、契約期間を超える場合にどうなるかといったシミュレーションもできます」と松永氏は述べた。300万円の少額ルールも組み込まれており、300万円未満なら自動的に「少額リース」と判定される。
武藤氏は「現状のインパクトをマネジメント層に報告する際にも、このシートは役立つはずです」とコメント。2027年4月の強制適用に向けて、経理主導と現場主導のアプローチを組み合わせて監査法人とも早めに協議しながら着実に準備してほしいとエールを送ってセミナーを締めくくった。
膨大なリース契約の管理や複雑な計算が必要になる日は近い。「PCA 固定資産シリーズ」のような専用システムの導入も視野に入れつつ、自社に最適な新リース会計基準対応の「現実解」を見つけてほしい。
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