急増する若手のメンタル不調 不幸の連鎖を断つ「心理的安全性」の作り方:労働市場の今とミライ(5/5 ページ)
メンタル不調を訴える人が増加している。中でも20代はメンタル不調により休職。その後は退職しても、働く気力を失う人が多いという深刻な事態に直面している。
根本的な対策は?
もちろんこうしたメンタル不調に特化した予防も大事だ。だが、筆者は社員の「心理的安全性」を高めることが根本的な対策ではないかと考える。心理的安全性とは誰もが気兼ねなく安心して意見を述べ、自分らしく働けることを指す。今は心理的安全性が低下しているといわれている。
背景の一つにリモートワークの普及がある。対面でのコミュニケーションが減少することで、上司のマネジメント範囲が広くなり、対応できないケースが増えている。
上司側はパワハラと指摘されることを怖れ、成長のために必要な指摘であっても、厳しいフィードバックをすることに躊躇する傾向にある。一方で旧来型の「指示命令型」の風土では、部下も「自分の考えを言いづらい」「言われたことに従うしかない」といった状態に陥ってしまう可能性もある。結果的に、それぞれの立場で、心理的安全性が低い状態が続いてしまう。
若年層の心理的安全性を高める職場づくりを実施している企業もある。大手印刷業では、チームミーティングを毎週実施。チーム目標の進捗状況や今週の目標をどうするかを話し合い、確認することを通じたコミュニケーションを実施するとともに、1on1ミーティングをチームミーティングと併せて月次で実施している。
上長が部下一人一人と話し合う時間をつくり、育成の観点から、目標達成に向けた助言や適切なフィードバックを行う。1on1では部下の業務の進捗を知るだけではなく、部下が目標を達成するために、改善点や今後の行動目標を立てるなど、支援するのが目的だ。
新任マネジャーが、すぐに自身のマネジメントスタイルを確立することは難しい。マネジャーとしての振る舞いや思考力を身に付けるための支援をする企業もある。
ある消費材メーカーでは、部下を持つマネジメント層を対象に「関係性向上プログラム」と呼ぶ研修を実施している。自分との関係性、メンバーとの関係性、チーム・他部署との関係性、環境・社会との関係性などの7つの関係性ごとに設けられたセッションで、講義と職場での実践を通じて身につける6カ月間のプログラムだ。
同プログラムを通じて、上司が自身のマネジメントスタイルを振り返り、会社全体で共有する「型」を身に付けた上で自分のやり方をプラスし、マネジメントスタイルを確立できるようサポートしている。
これらは旧来の指導法や価値観をアンラーニングすることで、上司自身が部下への向き合い方といったマネジメントスタイルを変革する取り組みだ。こうした取り組みが部下の心理的安全性を担保し、メンタル不調を引き起こさないために必要なのではないだろうか。
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