4月の「期待の新人」が5月に消える理由――「放任主義」上司が支払う代償:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)
かつては「5月病」と呼ばれ、大型連休明けにおける、サラリーマンがさいなまれる無気力感として語られてきた。しかし現在は、そんな悠長な話ではないのだ。「5月退職」どころか「4月退職」が現実になりつつある。
「放任主義」が新人を追い詰める
リアリティー・ショックを感じた新人が、それでも踏みとどまるケースはある。周囲に相談できる人がいる場合だ。
逆に言えば、相談できる人がいなければ、新人は孤立する。そして孤立した新人は、驚くほどあっさりと辞めていく。
ここで問題になるのが「放任主義」の上司だ。
「最近の若者は干渉されるのを嫌がる」「自主性を尊重したほうがいい」――そう考えてあえて距離をとる管理職は少なくない。しかし、これは完全な誤解である。
新人が嫌がるのは「干渉」ではない。「監視」と「放置」である。
必要なときに声をかけてもらえない。困っていても気付いてもらえない。質問したくても、忙しそうな上司に話しかけるタイミングがつかめない。こうした状況が続くと、新人は「自分はこの職場に必要とされていないのではないか」と感じるようになる。
そしてある日、退職代行サービスを調べ始める。上司に退職意向を直接伝える勇気はない。でも、このまま居続ける理由も見つからない。数万円を払えば、明日から出社しなくて済む――。その選択が、驚くほど簡単にできてしまう時代なのだ。
冒頭の営業部長は、まさにこのパターンだった。「何か悩んでいるなら相談してくれればよかったのに」という言葉は、一見すると正論に聞こえる。しかし、新人から見れば「相談してこないほうが悪い」と言われているに等しい。
相談しやすい環境を作るのは、上司の仕事だ。それを怠っておいて、辞めた新人を責めるのは筋が通らない。
新人研修で「三面等価の法則」を教えよ
ここまでの話は、いわば「守り」の対策である。孤立させない、逃げ道を作る、成功体験を与える。どれも大事だ。しかしもう1つ、入社直後に伝えるべき「原理原則」がある。
それが「三面等価の法則」だ。
仕事には、必ず「責任」「権限」「義務」の3つがセットで存在する。これは、やる気やモチベーションとは無関係の、仕事の原理原則である。
「責任」とは、任された職務をやり切ること。「権限」とは、職務を全うするために、分からないことを先輩や上司に相談できる権利のこと。そして「義務」とは、仕事の進捗状況を報告・説明する義務のことだ。
新人にはこう伝えればいい。
「仕事を任された以上は、その仕事をやり切る責任がある」
「その仕事をやり切るために、分からないことを先輩や上司に相談する権限がある」
「その仕事がやり切れるかどうか、進捗状況を報告する義務がある」
慣れない仕事であれば、定時内にやり切れないこともあるだろう。しかし、先輩にも上司にも相談せず、進捗状況も報告せずに「定時になったから帰ります」と言うのは無責任すぎる。これはハッキリと伝えるべきだ。
重要なのは、この法則はガチャでもなければ、精神論でもないということだ。どの会社に入っても、どんな仕事を任されても、責任・権限・義務の3つは必ずついてくる。これを「リアリティ・ショック」と感じるようでは困る。なぜなら、これは現実ではなく原理原則だからだ。
そして、もしこの原理原則を入社時に伝えただけでリアリティ・ショックを受けて辞めるような人材がいるなら、それは本人の問題ではない。採用基準が低すぎるという問題だ。採用プロセスそのものを見直す必要がある。
一度言っただけでは、人は変わらない
三面等価の法則は、入社時の研修で一度伝えればそれで終わりではない。
一度言っただけで、人の価値観や考え方が変わることはない。何度も繰り返し伝えることで、少しずつ浸透していくものだ。
「組織のメンバーである以上、任された仕事は完遂する責任がある。もし今の自分の力でできないのであれば、組織の誰かに協力を仰がなければいけない。そしてその判断も含めて、上司に報告する義務がある」
これを、会議のたびに、面談のたびに、日常の対話のなかで繰り返す。上司も、先輩も、同じ言葉で語る。そうすることで、新人の中にこの原理原則が根づいていく。
「見通し」と「認識合わせ」。この2つを日常的に意識させることが大切だ。今の仕事はいつまでに終わりそうか。終わらないとしたら、何がボトルネックか。上司と部下がこの認識を共有できていれば、突然の退職は起きにくい。
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