「Amazon Go」全店閉店は失敗ではない 無人店舗の「誤算」と次の一手:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(3/4 ページ)
米Amazon.comの「Amazon Go」全店閉店のニュースは大きな話題になりました。果たしてこれは失敗なのでしょうか? 筆者は、Amazonはすでに「無人店舗」での学びを次に生かすフェーズにあると、考えています。
Amazon Goのシステム、現在はBtoBで活用
では、この無人店舗事業は「失敗」なのでしょうか。冒頭で示した通り、そう単純に結論付けることはできません。現在、Amazonは無人店舗事業で培ったノウハウをBtoB領域で活用しようとしています。
Just Walk Outのシステムは、Amazon Goでの運用を通じて改善された後、現在ではBtoBソリューションとして既存の小売店舗へ提供されています。町中のショップだけでなく、スタジアムや病院、空港、大学など幅広い場所での活用が進んでいます。
つまり、無人店舗を拡大するのではなく、無人決済という「機能」を幅広い領域に普及させるビジネスモデルへと転換しているのです。
この戦略転換により、Amazonは店舗運営に伴うコストやリスクを回避しながら、技術提供を通じて継続的な収益を得られるようになります。導入する小売事業者側にとっても、既存の店舗や顧客基盤を維持したまま利便性を向上できるため、双方にとってメリットが期待できます。
完全無人から「ハイブリッド店舗」へ
さらに注目すべきなのが、「完全無人」にこだわらない新たなアプローチです。
Amazon Goの運営を通じて明らかになったのは、完全無人化は技術的には可能であっても、コストや運用の観点でスケールが難しいという点でした。そこでAmazonは、通常店舗にAIを組み合わせたハイブリッド型のサービスに注目しました。
その象徴となるプロダクトが「Dash Cart」と呼ばれるスマートカートです。来店客が商品をカートに入れるだけで自動的にスキャンされ、合計金額や割引情報がリアルタイムで表示されます。レジを通らずにそのまま退店できるため、利便性は大幅に向上します。また、完全無人化店舗のように、大規模なカメラやセンサー網を構築する必要はありません。
実際にAmazonは、このDash Cartを大手スーパーチェーン「Whole Foods Market」へ導入する計画を進めており、改良版の展開も発表しています。小売事業者からは、既存店舗に後付けで導入できる点や、設備投資を抑えながら顧客体験を向上させられる点が評価されています。今後はこのハイブリッド型の小売モデルが、主流になっていく可能性があります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
SNSでオモチャ化する「謝罪会見」 プルデンシャルは何を読み違えたのか
近年、謝罪会見がSNSでオモチャにされている様子をよく目にする。1月23日に実施された、プルデンシャルの謝罪会見も例外ではない。同社は何を読み間違え、SNSでオモチャとして扱われてしまったのか。
「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのか
落とし物は誰にとっても身近なトラブルだが、その回収はアナログで非効率なままだった。そんな市場を15億円規模に成長させた「find」とはどんなサービスなのかというと……。
ローソンの車中泊は、単なる「場所貸し」ではない 見落とされがちな体験価値とは
ローソンが実施している「車中泊」サービス、これは単なる「空いている場所を貸す」というビジネスにはとどまらない価値がある。利用者はどのような「価値」を見いだしているのか。
