「AI社員」がビジネスを変える? 便利さの裏にある“新たな脅威”:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
AIの新たな使い方として注目される「AIエージェント」。企業の一員として、自律的に業務を遂行するようになる可能性もある。一方、サイバー攻撃者も高度なAIを武器として使い始めており、攻めと守りの両面でAIをうまく活用することが求められる。
企業は最先端AIとどう向き合うべきか
これから民間企業はAIとどう向き合うべきか。企業はAIを単なるコスト削減の道具や実験的な技術ではなく、「戦略的パートナー」として位置付ける必要がある。
効率化だけを追い求めて急いで導入するのではなく、倫理やリスク、セキュリティ、AIのモニタリングなどに関するルールを決めることが、持続可能で安全な活用につながる。また、社員のスキルアップやルールのアップデート、企業などを取り巻く脅威やリスク情報の把握を継続的に行うことは不可欠だろう。
これからは、企業はサイバー攻撃などのリスクへの防御にもAIを活用するようになる。攻撃者側もAIを武器として活用する中で、企業が同等以上の技術を防御に活用できるかどうかは、今後の競争力を左右する要素となる。
リテシュCEOは言う。「権限の制限、ログ監視といった既存のセキュリティ原則を、継続的モニタリングとインシデント対応計画に組み込んでいくことで、企業は数百万ドル規模の潜在的な漏えいコストを削減できるだろう。重要なのは、AIのスピードとスケールに、人間の判断力と監督、強固なデータ保護を組み合わせることだ」
AIエージェントは、企業にとって「攻めの生産性向上」と「守りのサイバー防衛」の両面で、極めて強力な武器となり得る。一方で、同じ技術が攻撃者に悪用されれば、これまでにない規模のリスクを生み出す。だからこそ、企業はAIエージェントをうまく味方に付け、その「影」の側面に備えることが、これからの企業競争力の分水嶺になるだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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