KADOKAWA夏野氏、物言う株主から「解任」要請……そういわれても仕方ないといえるワケ(2/3 ページ)
夏野氏が掲げた「グローバル・メディアミックス with Technology」のキーワードは耳に心地よい。だが、5年間の業績だけをみると、物言う株主にとっては絶好の攻め所となってしまった。
「異世界転生」依存の功罪
オアシスが特に強く批判するのが、出版・IP創出事業の戦略だ。
KADOKAWAは新規IP創出目標として年間7000点の新規IPを創出する目標を掲げてきた。だがこの量的なアプローチが「1タイトル当たりの収益力低下」を招いたとオアシスは指摘する。
実際のところ、KADOKAWAにおける出版セグメントの営業利益は2022年3月期の173億円から2026年3月期には40億円となった。この点については、夏野氏自身も直近の決算説明で「出版部門とアニメ部門は非常に好調に推移していたので、その好調さの上に見えなかった課題や問題点もあった」と認めている。
KADOKAWAは5月14日公表の新中期経営計画で、刊行点数の抑制と編集体制の見直しへ方針を転換した。2032年3月期に売上高4000億円・営業利益380億円と従来の5カ年計画を6カ年に延長した修正目標を掲げている。
不調の原因としては「なろう・異世界・転生」型コンテンツへの過度な依存があったことを認めた格好だ。要するに、ヒットしたジャンルに物量で勝負した結果、ファンが食傷気味となり、ヒットする確率もブランド価値も擦り減っていったというところであろう。
「ELDEN RING」3000万本大ヒットでも笑うのは他社
ゲーム事業も論点になっている。KADOKAWAの子会社であるフロム・ソフトウェア開発の『ELDEN RING』は世界累計3000万本超を販売した規格外のヒット作だ。
だがオアシスは、海外パブリッシングをバンダイナムコエンターテインメントなど外部パートナーに委託しているため、本来得られたはずの利益の大部分が社外へ流出していると批判する。
これは経営判断として一概に否定できる話ではない。海外販売網を自前で構築するリスクとコストを考えれば、外注は合理的な選択だった時期もある。しかし、ここまで強力なIPを擁しながら、グローバル展開のバリューチェーンを自社で押さえようとする姿勢が見えてこないのは、KADOKAWAがIPホルダーとして国際的な競争力を高めようとしていないとも受け取られかねない。
また2024年6月には、ドワンゴのデータセンターが大規模ランサムウェア攻撃を受け、取引先の個人情報が大量に流出したり、ニコニコ動画関連サービスが長期停止したりする重大なセキュリティーインシデントも発生した。
この事件はKADOKAWAの足元の業績にも影を落としたと見られるが、危機後の事業再構築シナリオはいまだに見えてこない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
イオン株「最高値からほぼ半値」の衝撃 それでも高い市場の期待、どう応える?
「日本最大の小売業」の株価が、たった4カ月で4割以上吹き飛んだ。営業利益は過去最高を更新したにもかかわらず、なぜ市場からこのような評価をされているのか、解説する。
ニトリHDの時価総額半減……「36期成長神話」が崩壊した、これだけの理由
36期連続成長を成し遂げたニトリが、苦境に陥っている。その原因は、似鳥会長の相場観にあるのかもしれない……。
出前館、株価97%下落……なぜこうなった “海外勢”押し寄せたフードデリバリー、激戦の決着は
フードデリバリーは、出口が見えないコロナ禍に差した一筋の光明――次のプラットフォーム産業として期待されていた。それから5年あまりがたった今、何が起きているのか。
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体
今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。これはなぜだろうか。決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、株式市場の評価とは乖離した実態が浮き彫りになる。

