「忘れないうちに送っただけ」は通用しない 業務時間外の連絡を減らすルール作り、社労士が解説(1/2 ページ)
昨今「つながらない権利」に注目が集まっています。今回は、企業が勤務時間外の連絡についてどのようなルールを定めていけばいいのかを社会保険労務士が解説します。
ChatworkやLINE WORKS、Slackなどのビジネスチャットツールを導入する企業が増えています。定型的な挨拶文を省略できることや、スマートフォンからも送受信できることから、メールと比べて気軽に情報をメンバー内で共有できるメリットがあります。その反面、休みや冠婚葬祭というライフイベントのときにも業務連絡が入り、不快な気持ちになった人もいるのではないでしょうか。
こうした状況から、昨今「つながらない権利」に注目が集まっています。つながらない権利とは、労働者が勤務時間外に、仕事上のメールやチャットなどへの対応を拒否できる権利です。
勤務時間外に業務に関する連絡が入ると、休んだ気分にならないことが問題視され、2016年、フランスが世界で初めてこの権利を法律で定めました。従業員50人以上の企業に対し、勤務時間外の連絡を避けるためのルールを労使協議で定めることを義務付けました。
しかし日本では、まだまだ勤務時間外の対策が取られているとは言いがたい状況です。つながらない権利、すなわち勤務時間外の業務連絡を禁止している法律はありません。次回の労働基準法の改正で休日・夜間の業務連絡制限に関するガイドラインが策定される予定でしたが、改正時期の延期に伴い、詳細は未定となっています。
今回は、企業が勤務時間外の連絡についてどのようなルールを定めていけばいいのかを社会保険労務士が解説します。
「勤務時間外の連絡」問題、放置するリスク3選
帝国データバンクが実施した調査によると、勤務時間外の連絡の対応ルールがある企業は11.6%にとどまっています。ルールの有無を問わず、勤務時間外に連絡をする企業は70.0%でした。
違法でないからといって、勤務時間外の業務連絡に関する問題を放置するのは以下のようなリスクがあります。
(1)指揮命令下にあると判断された場合の残業代の請求
定時後や休日に上司からのチャットやメールに返信した場合、その頻度や内容から会社の指揮命令下にあると判断され、労働時間と見なされます。特に留意すべきなのがテレワークを実施しているような環境です。
テレワーク実施時には「事業場外みなし労働時間制」や「フレックスタイム制」を適用している企業もあると思われます。その場合でも労働者が会社の指揮命令下にあると判断されれば、残業時間と見なされます。
(2)パワーハラスメントと見なされる
休日に業務連絡をして返信がない部下を叱責(しっせき)したり、評価を下げたりする行為は、パワーハラスメントと見なされる恐れがあります。
また、思い付いたことを忘れないようにメッセージを送っただけで、返信は不要という上司もいます。ですが、金曜日の夜にメッセージを送って、月曜日の午前中の会議で意見を求めるような場合は、結果的に週末に仕事をしなければならなくなりますので、パワーハラスメントに該当するでしょう。
(3)メンタルヘルス不調による労災認定のリスク
勤務外の時間帯に常時、連絡がくることでメンタル不調に陥り、働けなくなる人もいます。
厚生労働省が定めた「精神障害の労災認定」は、心理的負荷による精神障害の基準により判断されますが、発病前の6カ月の間に業務による強い心理的負荷が認められる必要があるとされています。発症前の2カ月間から6カ月間にわたって、1カ月当たりの平均残業時間が80時間を超える場合は、労災と認定される可能性が高まります。勤務時間外の連絡が発端となって対応した行動が、労働時間と認められれば、残業時間が跳ね上がります。
2021年11月28日、東京地裁は2015年に長時間労働で過労死した服飾雑貨メーカーの男性の遺族が会社側へ損害賠償の請求を行った訴訟で、会社側に約1100万円の損害賠償を命じる判決を下しました。退勤後のメール送信やPCのファイル更新の時刻から、労働時間を認定したという判例です。
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