高級セレクトショップ「バーニーズ」が新品と中古の二刀流 富裕層の「初めての中古購入」を狙うワケ(1/2 ページ)
原材料高騰や為替の乱高下に苦しむアパレル業界で、高級セレクトショップの雄「バーニーズ」が下した決断は、高級リユース市場への本格参入だった。「街の中古店には行かない」という富裕層の心理を突き、新品とユーズドを同じフロアで融合させる「二刀流」戦略の全貌とは。既存ビジネスとのカニバリを「皆無」と一蹴し、客単価向上や顧客の若返りを実現するロジカルなポートフォリオ経営の勝算を、ペニー・ルオ社長に聞く。
「街のブランド中古店には足を運ばない」──そんな富裕層を引き寄せようと、ラグジュアリーセレクトショップ「バーニーズ」は、高級リユース市場に本格参入した。
同ブランドの運営会社バーニーズ ジャパン(東京都港区)は、シャネルやエルメスなど高級ブランドの中古服を厳選したコンセプトストア「CHELSEA VINTAGE ROOM」(チェルシー ヴィンテージ ルーム)を始動した。同社が成長する上での転換点となったのが、2025年に実施した銀座本店のリニューアルプロジェクト「大人のワンダーランド」だ。ギフトエリアとポップアップスペースを拡充した結果、新規顧客の購買数は前年比で20%増加し、入店客数も伸長。店舗体験の強化が着実な成果につながった。
そんな同社が、次なる成長の原動力として選んだのは、新品とユーズド(中古品)を組み合わせた「二刀流」の店舗体験だ。
同社社長のペニー・ルオ(Penny Luo)氏は、既存ビジネスである新品販売とのカニバリゼーション(食い合い)の懸念について「全くない、むしろ相乗効果だ」と言い切る。同社が抱える3つの経営課題――「顧客の若返り」「供給網の安定化」、そして2030年のニューヨーク再出店を見据えた「グローバル戦略との連動」を、1つの事業で一気に解こうとする勝算とは。2024年7月に社長に就任し、旧来のビジネスモデルからの改革を進めるルオ氏に、ファッション業界での生き残り策を聞いた。
ペニー・ルオ(Penny Luo) バーニーズ ジャパン代表取締役社長。中国のグローバルIT企業Tencentグループにて番組制作やライセンス事業に従事した後、2021年より450年の歴史を持つ英国名門校「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」のスクールアンバサダーとして開校プロジェクトを主導。さらに、岩手ホテルアンドリゾートではリゾート事業再生のための都市開発責任者を歴任した。異業種における新規事業立ち上げやプロジェクトマネジメントの豊富な経験を引っ提げ、2023年にバーニーズ ジャパンへ参画。2024年7月に代表取締役社長に就任し、現在は旧来のビジネスモデルからの脱却を図るべく、収益基盤の再構築、マーケティング強化、新規顧客層の開拓といった全社的な改革の陣頭指揮を執る(以下写真はバーニーズ ジャパン「チェルシー ヴィンテージ ルーム」内覧会での提供)
3つの経営課題を解く 50兆円市場を見据えた「ヴィンテージ戦略」
今回の施策の背景には、世界的なリユース市場の拡大がある。
米Boston Consulting Groupの調査によれば、ファッション・高級品の中古市場は急成長を続けており、2025年には約2100億〜2200億ドル(33.6兆〜35.2兆円)規模に達する見込みだ。リユース品のファッション・高級品市場は新品市場を上回るペースで拡大し、2030年には約3200億〜3600億ドル(約51.3兆〜57.7兆円)規模に達すると予測する。バーニーズ ジャパンの取り組みは、こうした市場構造の変化を先取りするものだ。
チェルシー ヴィンテージ ルームの事業的意義は3つある。第1は、既存顧客との関係を維持しつつ新規顧客との接点を作る「顧客層の拡大」。第2は、新品市場での原材料高騰や供給不安に対する「安定的な調達」。第3は、2030年ニューヨーク再出店を見据えた「グローバル戦略との連動」だ。
既存顧客の単価を維持しながら客層を広げるという経営目標において、ラグジュアリーファッションヴィンテージという商品構成は高い親和性を持つ。会社全体のポートフォリオ経営として、成長性と安定性の両立を目指す取り組みといえる。
母娘が同じフロアを回遊する 二世代の顧客接点
2025年に試験的に開始したヴィンテージのポップアップ展開では、既存顧客と新規顧客の割合が時期によってほぼ半々となり、場合によっては既存顧客が上回る結果となった。これまで中古商品に抵抗感を持っていた顧客も、バーニーズの厳しい品質基準やスタイリング提案を通じてヴィンテージ商品に触れる機会を得た。既存顧客にとっても新鮮な購買体験として受け入れられ、事業拡大を後押しする結果となったという。
ルオ氏は「当社のお客さまは45〜55歳以上がメインですが、この半年間のテスト展開を通じて、既存のお客さまの“ファーストヴィンテージ” (初めての中古品購入)がバーニーズだったというお声を非常に多くいただきました。それは、バーニーズが提案するからこそ安心して買っていただけるという、私たちが長年培ってきた歴史と信頼の証明です」と胸を張る。
また、同社はヴィンテージ事業を通じて世代を超えた顧客接点の拡大も狙う。母親世代はバーニーズ ニューヨークで新品ラグジュアリーファッションを購入する一方、Z世代やミレニアル世代の娘世代に向けた選択肢は限られていた。ヴィンテージエリアは、その課題を解決する新たな接点として機能している。実際に親子で来店し、それぞれが商品を選ぶケースも増えているという。
ルオ氏は「母世代は新品を購入する一方、Z世代やミレニアル世代の娘世代はヴィンテージのエリアに行きます。同じフロアでお互いが行き来できる動線にしたことで、親子で一緒に買い物を楽しむという新しい店舗体験が実際に生まれています」と現場の手応えを語る。
こうした取り組みの背景にあるのは、若年層の消費行動の変化だ。同じくBoston Consulting Groupの調査によれば、Z世代では所有するファッションアイテムの3割以上を中古品が占めるという。Z世代は中古市場の成長を支える存在となっているのだ。
購入理由として価格の手頃さが挙げられる一方で、限定品や掘り出し物との出会い、自分らしいスタイルづくりを楽しむ傾向も強い。また、約8割が中古品を通じて新たなブランドを知った、あるいは購入した経験を持ち、中古市場はブランドへの重要な入口となっている。
この「二世代戦略」を支えているものが何かを考えると、同ブランドが長年にわたり築いてきた顧客との信頼関係が挙げられる。「バーニーズだからヴィンテージを買う」という顧客の声は、ブランドへの高い信頼を象徴している。ヴィンテージ事業は単なる中古品販売ではなく、世代を超えて顧客との関係性を深める新たな戦略だ。
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