大量リード獲得の虚しさ 名刺アプリ「Eight」がイベント事業で年50%成長を続けるワケ(2/3 ページ)
年50%成長を続ける「Climbers」を始めとしたSansanのEight事業部によるイベント事業。かつて12万人を集客したトッププロデューサーが抱いた「大量リード獲得の虚しさ」とは? 従来の展示会の在り方を変え、名刺400万人のデータで「無駄な量を捨て、実利(質)」を担保するイベントDXの深層に迫る。
400万人のデータが武器 「狭く、深く」ターゲティング
ビジネスセミナーを開くにあたって、スポンサー集めに苦労する企業は多い。
石本部長によると、Eightが主催するイベントでは、来場者数を増やすことよりも、イベントの質を上げることに注力しているという。日ごろ開催しているDX、HR、AIなどのビジネスイベントでは、ニッチ分野のトップランナーを招へいしている。
「スポンサーをするという投資に対し、お客さまの商売につながる成果を出すこと、つまりROI(投資利益率)を向上させるための仕組みを設けています」(石本部長)
例えば「経営企画部戦略サミット」を主催する場合、あえて経営企画のキーパーソン200人しか集めない「狭く、深く」というクローズドなスタイルを徹底するという。購買意欲と決裁権を持つ当事者だけを集めなければ、スポンサー企業の実利(商談化)につながらないからだ。
この質の高いターゲティングを可能にしているのが、Eightが保有する400万人規模の名刺情報である。
一般的なイベント主催者は、不特定多数に向けて手探りで広告を打つしかない。だが、Eightであれば「特定の職種・役職」を正確にセグメントしてピンポイントでアプローチできる。名刺データを起点に、アルゴリズムを駆使して「売る側」と「買う側」のミスマッチを解消し、商談が成立する瞬間までをデザインできる。これこそが、Eightの優位性なのだ。
「意欲の高い方が来場しないと、商談にまで進まず、実利につながらないイベントという評価になってしまいます。だからこそ参加者の『質』が重要なのです。参加者がスポンサーの商品を買うかどうかは非常に重要で、私たちはそこまで見届けないといけないと考えています」(石本部長)
ROIとともに重要視しているのが、スポンサー企業の認知度向上やブランディング効果だ。仮に、上場を目前に控えたスタートアップ企業の社長が登壇した場合、そのプレゼンを見た社員は「当社もここまで来たか!」という喜びを感じるだろう。それは強いインナーブランディングの効果をもたらす。そういった企業に対して「会社としてフェーズが変わる瞬間を、Climbers Xで一緒に体験しませんか」と話し、スポンサードしてもらうこともあるという。
大物を巻き込む「壮大なテーマ」という共感設計
Climbersの価値を押し上げたのは、普段、なかなか登壇しない大物がビジネスパーソンを前に自身の体験を語るイベント設計だ。2020年のコロナ禍では「日本のビジネスパーソンを元気にする」というテーマで、河野太郎氏や松井秀喜氏、そして井上尚弥氏が登壇した。他イベントではなかなか見たことがない大物だ。
「登壇者は、有名であればあるほど『高いギャラをお支払いするのでぜひ出てください』とお願いをしても、出てくれない方々ばかりです。依頼する際に心掛けたのは『日本のビジネスパーソンを元気にする』という壮大なテーマに対して、登壇者に共感してもらうこと。これに尽きます。『あなたの言葉が必要』という手紙を、郡司と一緒に書いてお願いしたこともあります」(石本部長)
こうした壮大なスローガンは、1社で背負いきれるものではないということで、テレビ東京や幻冬舎などのパートナーを探し、共同主催の協力を得たという。
AI時代だからこそ「答えが出ない問い」を提供
AI時代が到来し、知識を得ること自体は、これまで以上に容易になった。そんな中Climbersでは「答えが出ない問い」を提供することで、体験価値の創出を図っている。
通常のビジネスイベントでは、ビジネスのノウハウやHow toといった「仕事をどう効率化するか」という話に終始しがちだ。しかし郡司ディレクターは「明日から行動を変えてほしい」という考えから、生産性の話をイベントで話す必要はないと考えているという。
「ある一流クリエイターの方から『私はビジネスのHow toの話はできない』と言われたことがあります。その際に私は『はい。しなくていいんです。むしろ、世界と戦っていく一流のマインドセットや若い頃に苦労したこと、何が最後まで自分を突き突き動かしたのかを話してほしい』と伝えました」(郡司ディレクター)
スピーカーには、参加者に対して「答え」を提供するのではなく「問い」で終わってもらって構わないと郡司ディレクターは伝えているという。
「会場にいる方々と一緒に答えを探す、くらいのスタンスで十分だと考えています。進行役や司会の方にも『つまり、〇〇ですね?』など、言葉でまとめるのではなく、深掘りしていく方向に持っていってほしいと伝えています」(郡司ディレクター)
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