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家電売り場はなぜ“中国化”したのか 静かに進んだ日本メーカーの撤退劇世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

家電量販店では、中国製品が存在感を強めている。日本企業による家電事業の売却が進んだことなどが背景にある。一方、これは日本のものづくりの敗北を意味するわけではないだろう。

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今の売り場は日本の“敗北”ではない

 このようなケースもある。EUの欧州委員会は、中国の空港向けセキュリティ・警備機器大手の同方威視(ヌクテック=Nuctech)に対して、不当価格(中国政府の補助金によって競争をゆがめているとの指摘)などを理由に立ち入り調査を行った。これを受けて中国政府は、2026年4月に施行した「反外国不当域外管轄条例」をちらつかせて対抗しようとしている。

 同条例は、外国による不当な域外管轄や情報要求に対抗する枠組みだ。中国企業に対する国外からの調査やデータ提出の要求が「不当な介入」とみなされれば、中国政府から拒絶命令が出され、関係者が入国を禁止されたり、ビザを取り消されたり、強制送還されたりする可能性がある。

 日本に当てはめれば、中国製家電が日本市場で普及する中、日本の当局がセキュリティ上の懸念からこれらを調査対象とする場合、この条例の発動対象となるリスクに警戒が必要だ。

 この条例により、対象企業は日本の調査への協力や情報提供を禁止され、日中の規制の間で板挟みとなる。結果として、サプライチェーンの混乱や日本企業への対抗措置へと発展する恐れがあり、安全保障を理由とした安易な規制や調査の実施には、中国の法制度を踏まえた慎重なリスク管理が求められる。こうしたリスクは中国製品が増えるほど高まるため注意が必要だ。


日本のものづくりは終わったのではなく、主戦場が変わった(画像提供:ゲッティイメージズ)

 話を戻すが、日本の家電が中国製だらけになった理由は、中国が突然攻め込んできたからではない。日本企業が低収益の家電から退き、中国企業が量産力と買収で空白を埋め、流通サイドが低価格を求め、消費者が「十分な性能で安い商品」を選んだ。その結果として、今の売り場ができたのである。

 これは日本の“敗北”を意味しない。日本企業はすでに、家電そのものを作る企業から、ブランドや研究開発、素材、サービスなどで稼ぐ企業へと変わりつつある。問題は、完成品の国籍ではなく、どこに付加価値を残すかだ。中国製の家電が増えた売り場は、日本のものづくりが終わった証拠ではなく、ものづくりの主戦場が変わったことを示すサインなのである。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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