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500円席は投資、10万円席で回収 ハンドボール界が仕掛ける「超・高低差プライシング」(1/2 ページ)

パリ・サン=ジェルマンを日本に招へいする「PSGハンドボールジャパンツアー」は、年を追うごとに認知を拡大してきた。実行委員会事務局長は「チケッティング(チケット販売に関わる業務全般)は、事業を推進していくための最大のカギ」と語る。高いチケットは「10万円超」、安いものはなんと「500円」。この「超高低差のプライシング戦略」が、ハンドボール市場を活性化する戦略だという。

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 日本においてハンドボールは、マイナー競技の域を出ない。しかし欧州を始めとしてオリンピックでも人気のあるスポーツだ。

 日本で、この「未知なる有望市場」を掘り起こそうとする動きが進んでいる。8月4〜5日には、欧州のパリ・サン=ジェルマン(PSG)ハンドボールが来日し、国内の強豪であるプロハンドボールチームのジークスター東京と、東京・有明アリーナで試合を実施する。

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8月4〜5日には、欧州のパリ・サン=ジェルマン(PSG)ハンドボールが来日し、国内の強豪であるプロハンドボールチームのジークスター東京と有明アリーナで激突する(提供写真)

 PSGを日本に招へいする「PSGハンドボールジャパンツアー」は2023年より始まっており、年を追うごとに認知を拡大してきた。特にZ世代の女性層から支持を集め、推し活人気を広げているという。

 実行委員会事務局長としてツアー開催を主導するのは、ラグビーワールドカップ2019 日本大会でチケットの販売率99.3%を叩き出し、東京2025世界陸上でも国立競技場を延べ61万人の観衆で埋め尽くしたマーケター、大内悠資氏だ。

 大内氏が「チケッティング(チケット販売に関わる業務全般)は、事業を推進していくための最大のカギ」と語る通り、今回のツアーではユニークな価格設計を導入している。高いチケットは「10万円超」、安いものはなんと「500円」──。この「超高低差のプライシング戦略」が、ハンドボール市場を活性化する戦略だという。

 東北楽天イーグルスや名古屋グランパスを渡り歩いてきた同氏が仕掛ける独自のLTV(顧客生涯価値)向上戦略に迫る。

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大内悠資(おおうち・ゆうすけ) PSGハンドボールジャパンツアー2026実行委員会事務局長。ジークスタースポーツエンターテインメントCMO(チーフマーケティングオフィサー)。新卒で楽天グループに入社し、システムエンジニアとしてグループ横断型のWeb広告配信サービスを担当後、同グループの野球・サッカーチームにおけるスタジアム集客業務に従事。2017年からは、ラグビーワールドカップ2019組織委員会にてチケット販売戦略の策定やチケット販売・集客を推進し、販売率99.3%という大会史上最高の成果を達成した。その後は、名古屋グランパスのマーケティングや広報の管理職を歴任し、独立。スタジアムやアリーナの満員を支援する「フルスタジアムラボ」を立ち上げる。東京2025世界陸上では最年少ディレクターとして、広報やプロモーション、フルスタジアムにするためのチケッティング、集客戦略を策定・推進。2025年よりジークスタースポーツエンターテインメントCMO(筆者撮影)

「1分1点」の高速体験を「タイパ重視のZ世代」に訴求

 大内氏は、ハンドボールの成長性に強い確信を持っている。理由は、現代の消費トレンドである「タイパ」(タイムパフォーマンス)と親和性があるからだ。

 前後半30分ハーフと、他の球技と比べて総競技時間が短い一方、各チームの平均得点は約30点。単純計算で1分に1点はゴールが入る高密度な試合展開で「観客を飽きさせない」構造を持っている。これがTikTokやInstagramリールなど、日常的にショート動画を消費するZ世代の視聴習慣と見事に合致しているのだ。

 背の高い鍛え上げられた選手がスピーディーに空中を舞う「スカイプレー」や、ボールに強い回転をかけてゴールキーパーとゴールの隙間を射抜く「スピンシュート」など、視覚的な華やかさは、SNSの切り抜き動画として拡散されやすい競技特性を持つ。

 さらに屋内競技という利点を生かし、照明や音響などさまざまな舞台装置を組み込むことで、エンタメとしての興行の質を極限まで高めた。現在は客の6割を女性が占めており、従来のスポーツとは異なるファン層の獲得に成功している。

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視覚的な華やかさは、SNSの切り抜き動画として拡散されやすい競技特性を持つ(©2025 PSG Handball Japan Tour / Taguchi Yukihito)

世界の強豪「PSG招へい」で市場を広げる

 日本のハンドボール界は2024年9月、世界で戦えるプロ体制を目指し、新リーグ「リーグH」として再始動した。この新リーグ以前から、市場全体の底上げに取り組んできたのがITコンサルティング大手フューチャーの創業者であり、日本ハンドボール協会会長も務める金丸恭文氏だ。同氏が中心となり、2023年に世界屈指の強豪であるPSGを初めて日本へ招致した。

 ハンドボールの知名度を上げ、国内全体の競技人口やファン層を拡大するために、世界的なIP(知的財産)であるPSGをフックにし、普段は競技を見ない層への「タッチポイント」を創出しようとしてきた形だ。

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東京・渋谷で開催したパリ・サン=ジェルマンの体験型ポップアップスペース「ICI C’EST PARIS LAMAISON」(イシ・セ・パリ・ラ・メゾン)のイベントにPSGハンドボールジャパンツアー2026としてトークショーを実施。重要なタッチポイントとなった(筆者撮影)

 PSGのサッカー部門は2022年、2023年と日本ツアーを実施し、親善試合を開催した。一方ハンドボール部門の来日は、2026年で実に4年連続となる。これはPSGハンドボールが日本市場を極めて重視している証だ。

 大内氏によると、PSGの選手や関係者は、日本で試合を開催することに対し、好印象を持っているという。

 「2025年は、東京2020オリンピックのハンドボール会場となった代々木第一体育館で試合を開催しました。初日は8000人、2日目は6500人と合計1万4500人が来場。欧州のプロリーグの平均動員数は3000〜5000人で、日本ツアーほどの観客数の前でプレーする機会は少ないそうです。エンタメなど演出も含めた会場の雰囲気の良さは、欧州を凌ぐ特別な空間だと話していました」

 日本ツアーが放つ熱量と市場としてのポテンシャルは、本場の選手たちをも驚かせている。

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ITコンサルティング大手フューチャーの創業者であり、日本ハンドボール協会会長も務める金丸恭文氏が中心となって2023年、世界屈指の強豪であるPSGを初めて日本へ招致した(提供:ジークスタースポーツエンターテインメント)

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