工場に「失敗してもいい場所」を作ったら何が起きた? アズビル湘南工場の「けしからん挑戦」(1/3 ページ)
工場は、決められた作業を正確にこなす場所――。そんな常識に挑む取り組みが、アズビルの湘南工場で始まっている。社長の「もっと、けしからん工場になってほしい」という一言をきっかけに誕生した実験場「KASETZ」では、社員の創造性を引き出すユニークな仕掛けが次々と生まれている。
「日々、淡々と作業をこなすだけだよ」――制御・計測機器の開発・設計などを手掛けるアズビルの生産現場では、かつて新入社員が先輩社員から、こんな言葉をかけられることもあった。
同社の生産拠点・湘南工場では約850人の従業員が働き、約1000種類の製品を製造している。長い歴史の中で培われたノウハウや厳格なルールは、安全・安心な生産を支える基盤である一方、工場で働く人たちの発想や行動を、どこか窮屈なものにしていた。効率と正確さを追求するあまり、いつしか「余計なことはせず、決められた作業をこなす場所」という空気が漂っていたという。
工場は本当にただ作業をこなすだけの場所でいいのだろうか。もっとクリエイティブに、さまざまなことを試してよい場所なのではないか――このような思いから、湘南工場では生産ラインの一画に、創造性を発揮するための実験場「KASETZ」(カセッツ)を作った。
働く人の創造性にフォーカスしたこの取り組みは、現場に何をもたらしたのか。
社長が投げかけた「もっと、けしからん工場になってほしい」
プロジェクトの引き金となったのは、社長の「もっと、けしからん工場になってほしい」という言葉だったという。これまで実直に仕事をしてきた工場の人たちに新しい変化をもたらし、より元気に創造性を発揮してほしい。生産効率ではなく、そこで働く「人」に焦点を当てた指示だった。
経営陣からのボールを受け取ったのが、湘南工場で働く島崎徹さん(「崎」は「たつさき」、生産技術部 生産技術企画グループ)と美馬亨さん(生産1部 ユニット生産グループ 1チーム チームリーダー)だ。
「工場には多くの生産ラインがありますが『自分が担当するライン以外のことは分からない』という閉じられた状況でした。湘南工場では850人もの人が働いていますが、限られた人としか関わりを持つこともなく、現場でも課題感がありました」(島崎さん)
2人は工場を変えるためのプロジェクトメンバーを選定した。生産技術部門から2人、生産部門から6人、そしてデジタル領域を支えるメンバー2人を加えた計10人の有志による、組織横断型の異色プロジェクトがスタートした(所属はプロジェクト立ち上げ当時のもの)。
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