経営者「昭和のように働いて」社員「休みより収入」 導入してほしい制度1位でも「週休3日」が広がらない納得の理由(3/3 ページ)
有名企業が導入して話題になる週休3日制。今回は、週休3日制が浸透しない理由や導入している企業の事例、導入に必要な手続きを社会保険労務士の視点から解説します。
中小企業こそ、週休3日制を導入すべき
とはいえ、あえて週休3日制を導入する企業もあります。法定開示書類の制作・印刷、IPOなどの支援を行う宝印刷(東京都豊島区)は、全社員に12日分の特別有給休暇を付与し、繁忙期と夏季を除く9月〜翌年2月までの半年間、隔週で週休3日とする制度を導入しました。
印刷業界といえば、労働集約で長時間労働のイメージもあり、意外な印象があります。しかも繁忙期を除いて「隔週」とはいえ、全社員を対象としているのには注目すべきです。
宝印刷が週休3日制を導入する目的は、社員のウェルビーイングの向上と生産性の維持・向上だといいます。ちなみにウェルビーイングとは、社員の自己研さんや社会・家族・地域などとのつながりを強化することを指しているそうです。
今後は中小企業こそ、こうした制度の導入を検討すべきでしょう。大企業の賃上げが急速に進む中、新卒・中途を問わず、20〜30代の若手社員を確保するのが困難になってきています。中小企業は資本的な体力が乏しく、賃上げがしにくいため、求人票に記載する給与額も大企業に比べると見劣りしがちです。
しかし週休3日制の導入であれば、規定の変更や労使協定の締結などで済みます。導入のメリットは採用だけにとどまりません。休日が増えることで従業員の満足度が上がり、離職率を下げられます。さらにオフィスの光熱費や通勤手当など必要経費の削減も期待できます。
週休3日制、導入のポイントは?
週休3日制を導入するには、先述した3パターンのうち「週の勤務日が1日減る分、1日の労働時間を8時間から10時間にして給与は変えない」が有効です。
勤務時間を減らして給料を据え置きにする方法もありますが、1カ月の所定労働時間が減り、1時間当たりの基本時給額も跳ね上がります。それに伴い残業代もアップするので、この方法を採るのに躊躇(ちゅうちょ)する企業は多いと思われます。
ただし1日の労働時間が8時間から10時間になることに対し、精神的にも肉体的にもハードに感じる人はいます。出勤日に業務が集中し、結果的に残業時間が増えたり、日々の疲労が蓄積したりするリスクがあるでしょう。従業員の心身に関するケアは不可欠です。
また平日の営業日、全社的に休むわけにはいかないのでシフト制を組むことになるでしょう。それに伴い、担当者が不在時にも対応できる体制作りが必要です。変形労働時間制のために労使協定を締結したり、就業規則を変更したりするだけでは不十分です。各人の業務内容をより細かく洗い出し、属人化から脱していくことも求められます。
ダイハツ、旭化成、NOT A HOTELなど登壇:
無料セミナー「ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏」開催!
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
- 開催日:7月8日(水)〜8月5日(水)
- 形式:オンラインセミナー
- 参加費:無料
著者プロフィール
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
同一労働同一賃金はこう変わる 企業がまずとるべき対策3選【10月施行】
今年10月1日に、新しい同一労働同一賃金のガイドラインが施行予定です。改正のポイントや、企業がまずは優先してやるべき対応3つを、社会保険労務士が解説します。
リファラル採用で紹介者に「報酬100万円」はアリ? 法律違反を避けるための要点
中途採用の方法として、リファラル採用を導入する企業が増えています。そこで今回は、リファラル採用のメリットと導入する上での留意点を社労士が解説します。
「1on1をすれば大丈夫」は間違い 若手の心理的安全性を高める“3つの説明”
新入社員や中途採用社員の定着率を高めるためには、心理的安全性を高めることが重要だといわれています。企業は心理的安全性を高めるため、苦心しているように見受けられますが、見落とされがちなことについて社会保険労務士の立場から解説します。
「公益通報」と「ハラスメント」、企業は相談窓口を分けるべき 線引きの理由を解説
兵庫県やフジテレビなどの問題を通じて、注目が集まる公益通報者保護制度。3月4日には、公益通報者保護法の一部を改正する法案が閣議決定され、1年半以内に施行されることになりました。法改正の概要やハラスメント対策との違いについて解説します。

