アメックスが売る「メンバーシップ」の正体:「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)
アメックスは「カードではなく、メンバーシップを売っている」と語る。しかし、お金を払えば誰でも入れる会員制は、サブスクと何が違うのか。説明会とランチ懇親会での取材を通じて、その違いを考えた。
最近のラグジュアリーの会員制は「狭き門」
説明会の後は、同じ部屋でそのままランチ懇親会になった。前菜は、焼きナスの上にトマトと魚を重ねた一皿。メインは赤ワインソースをまとった牛肉である。ここ数日の東京は、日本の夏とは思えないほど涼しい。51階の窓の外には、澄んだ空が広がっている。なるほど、これが「体験価値」というやつか。妙に納得しながらナイフを動かした。
同じテーブルには、個人向けカードを統括する山本尚・コンシューマープロダクト&パートナーシップ副社長がいた。せっかくなので、素朴な仮説をぶつけてみた。いまラグジュアリーブランドの世界でメンバーシップといえば、むしろ狭き門を指すのではないですか。
例えば、ロレックス。人気モデルは、正規店に行っても「在庫がない」。それでも何度も店に通う行為は「ロレックスマラソン」という俗語になっている。
エルメスはもっと徹底していて、バーキンは店頭に並んでいない。米国では2024年、バーキンを買うにはスカーフや食器といった他の商品の購買実績が必要だった、と主張する集団訴訟まで起きた(エルメスは違法性を争い、訴えは退けられた。原告は控訴中だ)。
フェラーリの限定モデルに至っては、購入を申し込むことすらできない。優良顧客だけに案内が届く売り方で、599台限定の「デイトナSP3」は発表時点で完売していた。
「お金を出せば買える」という考え方を否定することに価値を置く。何年も買い続け、ブランドへの忠誠を積み重ねた人だけが欲しいものにたどり着ける。これが現代版のメンバーシップではないのか。
しかし山本氏の答えは、アメックスのメンバーシップはもっとオープンなものだ、という方向だった。確かにアメックスにも招待制は残っている。プラチナの上に位置するセンチュリオン・カードは今も招待制で、誰でも持てるわけではない。
ただプラチナについては、日本ではかつて招待制だったものを、2019年4月から、招待がなくても申し込める形に切り替えた。クローズドの頂点は残しつつ、間口は徐々に広げていく。それが近年の戦略なのだという。
ここで謎は一段深くなる。お金を払えば誰でも入れて、入り口の選抜がない会員制。それって単なるサブスクではないのか。そうした疑問も、山本氏にぶつけてみた。
いや、サブスクとは違う。そう返されたものの、では何がどう違うのかとなると、お互いになかなか言葉にならない。ごちそうになっておきながら理解が追いつかず、申し訳ない限りである。ただ、ごちそうと納得は別勘定だ。ベリーの載ったデザートを食べ終えても、謎は残ったままだった。
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