Uber Eats黒字化の立役者 Airbnb新社長が明かす「脱・インバウンド依存」の勝算:26兆円市場を狙う
記録的なインバウンド特需に沸くAirbnb。だが為替や国際情勢に依存する成長モデルに危機感を抱き「脱・インバウンド依存」へとかじを切る。2月にトップに就任したUber Eats Japan黒字化の立役者・中川晋太郎代表取締役が狙うのは、26兆円規模の国内旅行・消費市場だ。ホテルとの消耗戦を避け、イベント連携や体験・サービスへの領域拡張によって日本人に新たな滞在習慣を根付かせる「巨大プラットフォーム化」の勝算に迫る。
記録的なインバウンド特需に沸く米Airbnb(エアビーアンドビー)が今、あえて“インバウンド依存”からの脱却にかじを切っている。為替や国際情勢というコントロール不能な外部環境に頼る成長モデルに、強い危機感を抱いているからだ。
2月、Uber Eats Japanを2年連続の黒字化へ導いた立役者といわれる注目のマーケター・中川晋太郎氏が、Airbnb Japanの代表取締役に就任した。同氏が狙いを定めるのは、訪日客需要の先にある、26兆円規模の「日本国内の旅行・日常消費市場」だ。
ホテル業界との消耗戦を避け、イベント連携やサービス拡張によって日本人の生活に新たな滞在習慣を根付かせる──。敏腕マーケターが描く「巨大プラットフォーム化」の勝算に迫る。
中川晋太郎(なかがわ・しんたろう) Airbnb Japan代表取締役(カントリーマネージャー)。慶應義塾大学卒業後、P&Gジャパンに入社。ユニリーバ・ジャパンでヘアケア部門のマーケティング責任者等を歴任。2021年にUberへ移籍し、マーケティング統括を経て2023年2月にUber Eats Japanの代表に就任、地方拡大と黒字化を達成。2026年2月より現職(アイティメディア 今野大一撮影)
「訪日客頼み」の限界を超える 26兆円の国内市場を狙う理由
――日本市場におけるAirbnbの成長ポテンシャルは?
日本は、Airbnbのグローバルビジネスにおいて最も成長率の高い国の一つとして位置付けられています。直近の日本国内の予約数は前年比127%で、市場拡大が継続しています。背景には2025年の国内旅行消費額が26兆7845億円という、非常に大きな市場が存在することがあります。
日本はアジア全域で最も成長率が高い地域であり、経済的成熟度と可処分所得の高さから、グローバル本社も重要市場として注視しています。単なる訪日客の受け皿にとどまらず、国内消費市場としての厚みが評価されている格好です。
――新規ユーザー獲得の重点戦略とは?
Airbnb Japanは、これまでのインバウンド需要の獲得から戦略をシフトさせ、日本国内で初めてAirbnbを利用する新規ユーザーの獲得に注力しています。具体的には、比較的若年層かつ大都市圏に住む層を最初の核としながら、全国展開を目指す構えです。都市部の早期採用層を突破口とし、そこで得た知見を地方展開の設計に反映させていく流れを描いています。
――日本市場特有の課題と対応方法は?
日本市場では、ユーザーの行動様式を変えるハードルが高く、マーケティング投資による認知獲得や利用方法の説明、アプリのUI/UX改善など、他国と比べて3〜4倍の労力がかかる傾向があります。また、日本人ユーザーのニーズはインバウンド利用者のそれとは大きく異なるため、国内旅行に寄り添ったアプリやサービス開発が必要となります。
この課題に対応するため、複数年単位での継続的な投資と、社内外への粘り強い説得活動が重要な役割を果たします。単年度の成果を急がず、腰を据えて認知を積み上げる姿勢が求められています。
「単なる宿泊予約」から脱却 ガンバ大阪連携・体験・空港送迎で接点拡大
――イベント連携による新規ユーザー獲得戦略とは?
Airbnbは、コンサートやスポーツ試合などのイベント開催に着目しています。イベント時には宿泊ニーズが瞬間的に高まり、宿泊需要と供給のバランスが短期的に崩れるため、ホームシェアリングサービスが活躍する絶好の機会です。具体例として、ガンバ大阪とのスポンサーシップが発表されており、スポーツファンが試合観戦のために旅をする習慣とAirbnbの滞在スタイルは本質的に合致すると考えられています。
――グローバルサービスの展開状況は?
2025年5月に宿泊に加えて「体験」と「サービス」の2つのカテゴリを新たに開始しました。2026年の夏季リリースでは、空港送迎やレンタカー、食品事前購入、荷物預かりサービスなどを拡充し、宿泊予約サービスから「旅全体をサポートするプラットフォーム」へ進化させる計画です。宿泊予約という一点の接点を、旅程全体を通じた複数の接点へと広げる狙いがあります。
ホテル業界とは戦わない Airbnb Japanが目指す「社会インフラ」
――競争戦略はホテル業界とどう異なるのか?
Airbnbはホテル業界と直接競合するのではなく、むしろ一緒にホームシェアリングという新しい習慣を根付かせることを重視しています。ユーザーが用途に応じて使い分ける選択肢を増やすことが目標であり、ホテルでの利便性とホームシェアリングでの体験の豊かさは相補的な関係にあると考えています。
――Airbnb Japanの長期ビジョンとは?
経営陣が目指すのは、Airbnbという言葉を日本で当たり前に使われる言葉として定着させることです。旅行計画や副収入、空き家活用を検討する際に、自然とAirbnbが最初の選択肢として思い浮かぶようになることが目標です。ホスト、ゲスト、地域コミュニティの三者が信頼し合える環境を作ることで、新しい社会インフラとして受け入れられることを目指しています。
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