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「AI時代、業務の再設計が必要」 それ、DXの時も言っていましたよね……本当にできる? 日本IBMの答えは

AIエージェントを導入して成果を出すためには「業務プロセスの再設計」が必要だという。振り返れば、DXの時も同じことを言っていた。日本企業は、今度こそ本当に実現できるのか。日本IBMが見解を語った。

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 AI活用の文脈で、よく耳にする“アドバイス”がある。

 「AIをただ導入しただけでは、期待する成果が出ない。業務プロセスを再設計し、全社横断で変革に取り組むことで、競争力を強化できる」――こんな論説に聞き覚えがある読者も多いだろう。

 この内容は、DXの指南記事、働き方改革セミナー、経営本などAIテーマに限らず至るところで登場している。「業務プロセスの再設計が必要だ」と長らく指摘されてきたが、実現できた企業はそう多くないはずだ。

 そうした中で今度は、AIエージェントの導入が広がるのに合わせて「業務プロセスの再設計」が注目されている。日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)の早川勝氏(執行役員 CAIO兼CTO)は8月25日、AI基盤に関する記者会見で、AIの価値を享受するポイントとして「AIと協働する前提で仕事そのものを作り変え、企業全体で運営し続ける能力」が重要だと語った。

 日本企業は、今度こそ業務プロセスを変革させられるのか。そのために必要なものとは何なのか。日本IBMが示すロードマップと、それに対する質疑応答の一部を紹介する。

photophoto 左から、日本IBMの早川勝氏(執行役員 CAIO兼CTO)、川上結子氏(常務執行役員 成長戦略統括事業部長)

「業務を再設計してAI導入」 成功企業は15%だけ

 日本IBMと米IBMは、自社内でAIエージェントを活用した「業務の変革」「経営の高度化」に取り組んでいる。IBM社内の業務を490に分解し、そのうち70の業務プロセスをAI前提のものに再設計した。4000以上のAIエージェントが人事、ITシステム、顧客対応などの領域で稼働しており、生産性の向上の効果は約45億ドルに上るという。

 IBMの調査によると、業務を再設計してAIを全社展開できている企業は15%にすぎないという。日本IBMの川上結子氏(常務執行役員 成長戦略統括事業部長)は「AIを作り、使う方法はもう知られている。それでも、経営成果に届いた企業は少ない。ここが乗り越えるべき『AI格差』の壁だ」と指摘する。

 この壁を乗り越えるため、川上氏は4つの段階を追って課題を解決することを提案する。

  1. 業務をどう再設計するか
  2. 自社の知識をどうAIに与えるか
  3. 人とAIをどう働かせるか
  4. どう統制してROI(投資利益率)を確保するか

 「ROI(投資利益率)を上げるための課題は、AIを組み込む際に業務プロセスを再設計していないことだ。個別の業務ごとにAIが乱立すると、業務全体の再設計はかえって遠ざかってしまう」(川上氏)

 IBMは、業務を作り変えるためのAIプラットフォーム「IBM Enterprise Advantage」をマネージドサービスとして提供している。前述した1〜4の各工程に応じたサービスがセットになっており、例えば業務の再設計を支援するサービス「Process Studio」では、既存の業務手順書を分析してエージェント型ワークフローに再設計できるという。

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AI格差を乗り越えるためのアプローチ(出所:日本IBMの記者会見資料)

「AI時代、業務の再設計が必要」 それ、本当にできる?

 日本IBMが提唱した「業務プロセスの再設計」について、記者会見では報道陣から鋭い質問が飛んだ。

――日本企業はこれまで、DXやBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング:業務改革)などに取り組んできた。「業務プロセスを変えなくては」という思いはあっても、何もできず今に至っている。それでもやはり、AI領域でも「プロセスを変えよう」という話になる。今までできなくて、これからはできるのか。

川上氏 「変える覚悟」が必要だ。「今までは覚悟がいらなかった」というわけではなく、そこは変わらない。ただし、AIでエンドツーエンドの業務フローを変えることによる効果は、過去と比較しても高い。その効果を目指すことが、変革の推進力になる。

 「IBM Enterprise Advantageが使いやすいため、業務プロセスの変革が進めやすい」ということもあるが、本質的には「変えなければならない」という覚悟が必要だ。

――「経営成果」とは何を指すのか。IBM自身もAI活用によって成果を上げているようだが、業績向上への影響は限定的にみえる。ROI(投資利益率)を向上させられたとしても、業績につながらなければ意味がないのではないか。

川上氏 デジタル技術を使う効果は、生産性向上によるコスト削減にある。IBMの場合は「量子コンピュータ、AI、ハイブリッドクラウドなどの事業を伸ばしたい」という思いが根底にある。そのためには投資が必要となり、投資の原資を作るところが「経営成果」に当たると考えている。売り上げのトップラインを伸ばすにも、原資が必要だ。

 (IBM以外の企業にも同様の流れを提案しており)基本的には「伸ばしたい領域、事業」に注力する原資を作るために、AIなどのデジタル技術を活用して無駄を削減することが大切だ。

――AIエージェントと協業するようになると、人間は「人にしかできない仕事」に注力する。「方針の策定」「例外への対応」「責任を取る」などは、確かに人の仕事だ。しかし、人数はそんなに要らない。でも、解雇はできない。新しい仕事を作るのにも限界がある。すると「AIを入れたのに生産性は変わらない」という事態も起こり得るのではないか。

川上氏 そういう企業が多数あることを認識している。「人員の削減」をターゲットにすると進まない。本来は「新しいビジネスを作る」「売り上げを伸ばす」など今後やるべき目標が必要で、そのために「人をこっちに集中させたい」という動機付けが必要だ。AIによる効率化が、そこにつながる。あらかじめ「どこに投資するのか」を決めておき、AIによる削減分について人を解雇するのではなく、異動させることがポイントだ。

――AIが期待通りに機能しなかった場合、誰が穴埋めするのか。AIがあるからといって、人員削減に踏み込んだ場合、穴埋めにかけられる人材も足りなくなってしまうのではないか。

川上氏 AIがチームにいる場合、リーダーが責任を持つことになるだろう。AIエージェントが出した成果が極端に低ければ、穴埋めが必要になるという意見はその通りだ。一定以上の品質のAIエージェントを使うことで、穴埋め(しなければならない状況)を減らせる。ミスを0件にはできないが、人間の従業員が働く場合と同じくバッファーを設けることが重要だ。

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IBMフランス本社の外観、2021年(画像:ゲッティイメージズ)

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