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アシックスはいかにして復活したか──「箱根駅伝着用ゼロ」の屈辱から売上高1兆円を叩き出した「選択と集中」(2/6 ページ)

箱根駅伝でのシューズ着用率0%という屈辱から、初の「売上高1兆円」を目前にするアシックス。ナイキの厚底旋風による歴史的敗北からいかにして立ち直ったのか。廣田康人会長CEOの直轄プロジェクト「C-PROJECT」による最速シューズ開発や、野球用具・体操着からの撤退といった「集中と選択」、オニツカタイガーのラグジュアリー化など、日本発グローバルブランドとして復活を果たしたアシックスの勝因に迫る。

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「厚底なんて、一過性のブームに過ぎない」 ナイキを見くびった代償

 2017年、陸上長距離界の王者だったアシックスの足元を、大きく揺るがす事態が起きた。ナイキが投入した厚底シューズ「ヴェイパーフライ」である。

 それまでの長距離ランニングシューズの常識は「軽さを追求するためにソール(靴底)を薄くする」という薄底至上主義だった。何十年間もその「薄底の成功体験」で世界をリードしてきたアシックスの社内には、ナイキの厚底に対する甘い見立てが存在していたという。

 「厚底なんて、一過性のブームに過ぎない」 「あんなに分厚いソールではけがのリスクが高く、履きこなせるランナーなど限定的だ」 「アシックスイズムを貫いていれば、いずれランナーは薄底に戻ってくる」

 廣田氏は「この当時、駅伝などで30%くらいのシェアを持っている成功体験があったので、ナイキの厚底は受け入れられなかった。特に中間管理職はそうでした」と打ち明ける。

 過去の成功体験から、新勢力のイノベーションを「一過性」と見る空気が支配的だったのだ。しかし、現場のランナーたちの判断は冷静だった。分厚いフォーム材とカーボンプレートがもたらすタイム向上に魅せられた選手たちは、続々とナイキの厚底へと乗り換えていった。

 その代償は、2021年1月2〜3日の「東京箱根間往復大学駅伝競走」(箱根駅伝)で表れた。全10区間、210人のエリートランナーが駆け抜ける舞台において、かつて過半数以上のシェアを誇っていたアシックスのシューズを履いたランナーは「0人」だったのだ。

 「着用率ゼロ」──。日本の陸上界を支えてきた老舗メーカーにとって、それは歴史的敗北だった。廣田氏が社長に就任した2018年には、北米事業の不振も重なって約200億円の最終赤字を計上。2020年にはコロナ禍が追い打ちをかけ、営業赤字に転落していた。

 「このままでは、アシックスという会社そのものが立ち行かなくなる」──廣田氏は当時の危機感をこう振り返る。


ナイキが投入した厚底シューズ「ヴェイパーフライ」(ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%。同社のWebサイトより)

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