AI技術を“無料で公開”、なぜ? 米IT業界の文化「オープン化」の裏にしたたかな戦略、日本は追随できるか(1/2 ページ)
AI分野で「オープン化」が進んでいる。企業はなぜ、自社技術を無料で公開するのか。そこには、AI企業のしたたかな戦略があった。
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インターネット、スマートフォン、クラウド――こうした新技術が爆発的に普及した背景に、2つのキーワードがある。技術の仕様を公開する「オープンスタンダード」(オープン標準)と、ソフトウェアの設計図を公開する「オープンソース」だ。開発者が技術を独占せず、誰でも無料で自由に利用できるため、技術の普及につながってきた。
インターネットの通信規格「TCP/IP」「HTTP」、スマートフォンの基本ソフト「Android」、クラウド管理技術「Kubernetes」(クーバネティス)、サーバや家電の裏で動く基本ソフト「Linux」(リナックス)など、オープン化されて普及した技術の例を挙げればきりがない。
そしていま「AI」にもオープン化の波が到来している。米OpenAIの「gpt-oss」や米Googleの「Gemma」など、AI各社が「オープンなAIモデル」を公開。米Anthropicは、AIと外部システムを接続するための規格「MCP」(Model Context Protocol)を非営利団体に寄贈した。
ここで疑問が湧く。企業はなぜ、オープン化に力を入れるのか。自社の技術を無料で公開すれば“専売特許”にできないし、非営利団体を支援しても直接的な金銭的リターンがあるわけではない。
この疑問に答えたのがAIエージェント技術の標準化を目指す非営利団体「Agentic AI Foundation」の責任者だ。8月25日の記者説明会で、AI技術を巡るオープン化の現状について説明。その中で、AI企業のしたたかな戦略と、日本企業の“勝ち筋”について触れた。
AI技術を“無料で公開”、なぜ? 広がる「オープン化」の実像
Agentic AI Foundationは、オープンソースソフトウェアの普及を推進するThe Linux Foundation(Linux財団)が2025年12月に設立した。発起人はOpenAIやAnthropicで、メンバーにはGoogleや米Microsoft、日立製作所など約250の企業・団体が名を連ねる。
同団体の調査によると、AI利用企業のうちオープンソースAIを使っている企業は2024年に65%だったが、2025年には89%に上昇した。ソースコード共有プラットフォーム「GitHub」で公開される生成AI関連プロジェクトの件数は、2023年から2024年にかけて98%増加したという。
AIと外部システムをつなぐ技術、MCPの普及も広がっている。MCPを実装するためのソフトウェア開発キット(SDK)は、2024年11月にオープンソースで公開された後、約20カ月後の2026年6月にはダウンロード数が累計1億2000万回を突破した。クラウド管理ソフトのKubernetesが同規模に達するのに3年かかったという。
Agentic AI Foundationの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)であるマニック・スルタニ氏は、AIエージェントが登場して以降、オープン化の流れが加速していると話した。AIエージェントは、複雑なタスクを自律的に処理する技術だ。AIエージェントの価値を引き出すには、業務システムやインターネットなどの外部システムと連携させる必要がある。
「単体で稼働するAIエージェントは、既に本番環境で動いています。次の波は『Internet of Agent』(エージェントのインターネット)でしょう。AIシステムがさまざまなものとつながり、AIがシステム間を調整するようになります。ベンダーの垣根を超えて、システムを連携させることになるため、オープンスタンダードやオープンソースがシステムの拡張に寄与します」(スルタニ氏)
オープン化が進むと「競争優位性の源泉」が薄れる
「オープン化が進むと、その技術はコモディティ化(一般化)が進み(提供企業・利用企業どちらにとっても)競争優位性の源泉になりにくくなります」――こう指摘するのは、Agentic AI Foundationの福安徳晃氏(日本担当バイスプレジデント)だ。
例えば、AIモデルを巡っては、オープンなAIモデルに追加学習やチューニングを施して性能を向上させ、そのモデルを無料で公開する動きがある。福安氏は「オープンなAIモデルは、クローズドなAIモデルに対して『価格が90%安くて、性能が90%高い』とよくいわれます」と説明。有料のクローズドなAIモデルが持っていた「性能」という競争優位性が薄れつつあるというのだ。
オープン化は、競争優位性を削ぐ可能性がある。それでも、企業が自社技術をオープン化したり、Agentic AI Foundationのような標準化を目指す団体に参画や出資したりするのはなぜなのか。
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