「○○さんに聞けば分かる」をAIに 日立建機がベテランの知恵を共有したワケ:AIエージェント組織実装の最適解(7/8 ページ)
日立建機は、ベテラン社員の経験や判断基準をAIに組み込み、過去の問い合わせ事例を検索・分析する仕組みを構築した。若手の対応時間を半減させるだけでなく、世代を超えた技術伝承にもつなげている。
「問い合わせの発生自体をなくす」という目標の上位化
日立建機の取り組みは、まだ発展途上にあります。
現在の活用は、テクニカルサポート部などアフターサポート関連部門が中心で、部内の利用率は5割程度(2026年7月時点)にとどまっています。今後はわかりやすいユースケースを増やすことで部内全体への浸透を図り、さらにはDX推進部門や経営層と連携しながら成功事例を他部門に横展開していく必要があります。その先に見据える目標が、「代理店による自己解決率の向上」です。
前述した通り、日立建機の技術サポート体制は「代理店・地域統括会社・テクニカルサポート部」の3層構造になっています。世界各国の代理店が顧客からの問い合わせを受ける最初のタッチポイントを担っています。
そこでテクニカルサポート部が目指しているのが、部内で確立されたAIアシスタント活用のノウハウを現場サイドにも展開していくことです。代理店のサービス担当者や整備士が、自分たちでAIアシスタントを使って一次解決できれば、上位層への問い合わせ件数自体が確実に減ります。さらに回答のスピードも向上し、ユーザーの満足度向上にもつながります。
同社の試算では、代理店から地域統括会社に上がってくる問い合わせ件数を8割削減できる可能性があると検証されています。齋藤氏はこれを「目標の上位化」という言葉で説明します。
「私たちテクニカルサポート部が問い合わせに対して迅速に回答するという目標から、『そもそも問い合わせの発生自体をなくす』へ。KPIそのものを引き上げていきたいと考えています」
さらにその先には、より大きな構想も見据えています。FIRを通じて世界中から集まる顧客の声を設計や品質保証など他部門へと還流させ、製品・サービスの改善につなげていきます。
また、テクニカルサポート部を世界中のユーザーの声を起点に製品を進化させる「最前線のハブ」へと進化させていきます。そうした事業構造そのものの変革にまで、視野は広がっているのです。
AI活用は一部門の効率化にとどまらず、新たな価値創出の源泉となる可能性を秘めています。
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