2015年7月27日以前の記事
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「稼ぐやつが偉い」 プルデンシャル61億円超の不正の根底にある、“制度に書かれていない”空気の支配:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/4 ページ)

「再発防止策を実行しただけでは、会社は変われない」――プルデンシャル生命を揺るがした営業社員らによる顧客からの不適切な金銭受領問題。改革が求められる中、問われているのは、制度の拡充ではなく長年現場を支配してきた「空気」の刷新だ。

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「安心」と「無気力」は紙一重 プレッシャーを削ぎ落とした先にある落とし穴

 ここで、気になることがある。プレッシャーを減らせば、問題は解決するのか、という点だ。

 最低保証給は、月35万円程度になると報じられている。これはプレッシャーの「量」を下げる施策である。ただし、活動経費が自己負担となる同社の働き方においては、現場の営業社員から「経費を差し引くと35万円では生活困窮が解消されず、根本的な解決にはならない」という声も出ているという。

 書籍『「空気」で人を動かす』の著者として、ここは強調しておきたい。プレッシャーには、大きく分けて2種類あるのだ。

(1)恐怖から生まれるプレッシャー

(2)達成への健全な執着から生まれるプレッシャー

 それでは、一つずつ解説していこう。

 (1)の「恐怖から生まれるプレッシャー」というのは、やらなければ生活できない、という追い詰められ方である。来月の収入が読めない。家族を養えるかどうか分からない。こうした状態に置かれると、人は正攻法より抜け道を探し始める。今回の不正も、その延長線上にあったのではないか。

 (2)の「達成への健全な執着から生まれるプレッシャー」とは、何とかして届かせたい、という前向きな力のことだ。このプレッシャーがあるから、人は新しい工夫を考える。目標を絶対達成し続ける組織に共通しているのは、この(2)の空気である。

 つまり、プレッシャーそのものが悪なのではない。減らすべきは(1)であり、(2)まで一緒に消してしまえば、組織から活力が失われるだけである。

 ここを取り違えるとどうなるか。最低保証給が入り、完全歩合制が消え、社員は安心する。しかし同時に、何とかして顧客の役に立とうという熱まで冷めてしまう。不正は止まったが、誰も動かない会社になった。そんな結末も十分にあり得るのだ。

 だからこそ、変えるべきは「怖いから動く」空気から「やりたいから動く」空気への転換である。報酬制度は、そのきっかけにすぎない。

「社長杯」は廃止か、継続か 組織の空気をつくる「表彰」の再設計

 もう一つ、議論になりそうなのが表彰制度だ。同社には「社長杯」と呼ばれる成績優秀者の表彰があり、こうした報奨制度が歪んだ風土を助長したと指摘されている。

 では、廃止すればいいのだろうか。私は、そうは思わない。

 問題は、表彰があったことではない。何を称えてきたか、である。新しい契約を取った人だけを称えてきたから、空気が歪んだのだ。

 報酬に占めるアフターサービスの比率を5%未満から20%へ引き上げるのなら、表彰の物差しも同じ方向へ変えなければ、つじつまが合わない。報酬では長く寄り添うことを評価し、表彰では新規獲得だけを称える。これでは社員は、どちらを見ればいいのか分からなくなる。

 そもそも、人は称えられたものを目指す。何を称えるかを決めることは、どんな空気をつくるかを決めることと同じなのだ。誰も称えない組織をつくることが、改革ではない。称えるものを変えること。それが、空気を変える第一歩になるだろう。

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