60代職人がExcelと格闘して計画策定――ヤンマー建機、作業時間を半減させた「100点を目指さないAI活用」の全て(1/3 ページ)
ヤンマー建機は生成AIとデータ基盤を活用して、職人の「勘と経験」に頼っていた生産計画の作成時間を半減させた。暗黙知の継承と属人化解消を実現した同社のDXに迫る。
小型建機メーカーのヤンマー建機(福岡県筑後市)は、生成AIとデータ基盤を活用し、熟練の職人技に依存していた「日次生産計画」の業務効率化と暗黙知の継承を実現した。60代のベテラン社員2人が毎日3〜4時間かけていた作業時間を半減させることに成功している。
「AI活用は『(はじめから)100点を狙おう』となりがちですが、私たちには難しいなと思っていました。まず(作業時間が)半分になれば、ゼロよりはいいよねというところを狙って進めてきました」
このように話すのは、経営戦略部 イノベーション推進部の田中重信部長だ。製造業の課題である「暗黙知の継承」と「属人化の解消」に、独自の“AI活用方法”で挑んでいるヤンマー建機。同社の生産計画DXに迫る。
本記事はウイングアーク1stが10月20日に開催した「AI時代のデータ活用基盤『DataTetra(データテトラ)』 記者説明会」における講演内容を基に構成。
Excelの“行”を並べ替える毎日――職人の「勘と経験」に依存していた生産計画
同社の工場では、0.5トンから10トンまでさまざまなサイズの建機を、2つのラインで生産している。ラインの生産効率を落とさないためには、作業負荷や部品供給などを考慮した緻密な生産順序調整が不可欠だ。経営戦略部 イノベーション推進部 DX推進グループの下川和人氏は、従来の課題をこう語る。
「これまでは、60代のベテラン社員2人が、Excelで行を並べ替えながら時間をかけて、勘と経験で生産順序を決めていました」(下川氏)
職人たちの頭の中にあるノウハウや制約条件は言語化が難しく、手順書の作成も難航していた。担当者の高齢化や人手不足が深刻化する一方で、日々の計画作成に追われて後進の育成に時間を割けず「暗黙知による業務の属人化」という課題に直面していたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIで月「400時間」「紙6000枚」削っても「そんな数字どうでもいい」 町工場が1億円規模のシステム内製で得たもの
「業務時間を何時間削減したか」は、AI活用の真の目的ではない――。金沢市の町工場、岡田研磨が進めるのは、AI時代の競争力となる「会社の記憶」の蓄積だ。
溶接工が「6時間」でアプリを開発 静岡の町工場が「500万円」かけて生成AI教育をした、驚きの効果
静岡県掛川市の町工場コプレックは、社員13人に約500万円を投じ、生成AIの教育を通じて現場主導で業務アプリを開発する体制を構築した。背景にあるのは、AI時代における競争構造の変化だ。ホワイトカラーの仕事がAIに代替される中、ものづくりの現場では何が起きているのか。
“現場一筋”の社員がAIツールを開発 「生産性24%アップ」実現した、自動車部品メーカーのDX推進
愛知県小牧市の自動車部品メーカー、オーテックでは、工場一筋のベテラン社員が、AIツールを開発し、生産性向上に貢献した。DX推進、AI活用を推し進める同社では、付加価値額を従業員数で割った労働生産性が24%向上、事務作業時間27%減といった成果を出している。現場の「ブルーワーカー業務」は、AIの普及でどう変わるのか、そして、リーダーに求められるスキルは、どう変化していくのか。
「楽になった分は、サボっていいよ」 老舗建設社長が社員にアプリ3000個自作させたワケ
「現場が動かない」「プロジェクトが続かない」――。こうした理由で頓挫するDXは少なくない。後藤組はIT人材ゼロから4年で3000を超えるアプリを生み出し、全社的な改革を実現。取り組みは一過性で終わらず、成果へと結びついている。なぜ「全員DX」は機能したのか。その背景を探る。
