なぜ上場を捨ててまでAIに賭けたのか? カオナビが非公開化して進める「脱・勘と経験の人事」(1/6 ページ)
人事データを可視化しても「勘と経験と社内政治」で決まる日本の人事。タレントマネジメント大手カオナビはこの課題に終止符を打つべく、株式非公開化という重い決断を下した。四半期決算の呪縛を断ち、5年間をAIと人事データの融合にあてる。同社が掲げる「タレントインテリジェンス」構想の全貌とは。2030年の再上場を見据えた佐藤寛之CEOの背水の変革戦略に迫る。
高額なタレントマネジメントシステムを導入し、社員の人事評価とスキルシートをクラウドに並べた。だが、いざ役員会や配属会議が始まると「あいつはガッツがある」「あの部署の空気に合わない」というように“勘と経験と社内政治”で人事案が決まっていく──。
日本の大企業が幾度となく繰り返してきたこのやりとりに、タレントマネジメント市場を切り拓いてきたカオナビ(東京・港区)が、自ら終止符を打とうとしている。同社は「株式の非公開化」(TOB)という極めて重い経営決断を下した。
目指すのは、データを眺めるだけの管理ツールからの完全脱却だ。社内に眠る人材データとAIを融合させ、経営陣から現場に至るまでが自ら考え、自信を持って次の行動を決定できる世界の実現を掲げる。
なぜ上場企業という看板を捨ててまで、5年間の集中投資に打って出たのか。AI時代に、経営者に残された「真の仕事」とは何か。代表取締役社長CEOの佐藤寛之氏に、背水の陣で挑む組織変革を聞いた。
佐藤 寛之(さとう・ひろゆき) カオナビ代表取締役社長 CEO。リンクアンドモチベーションにて、大手企業向け組織変革コンサルティングに従事。その後、シンプレクスにて人材開発の責任者として、急成長ベンチャーでの人事業務に従事する。2012年にカオナビを共同創業。2022年の代表取締役社長 Co-CEO就任を経て、2025年より代表取締役社長 CEOを務める(撮影・篠原成己)
「勘と経験の人事」を終わらせる AIが提示する“選択肢”と人間の仕事
カオナビは2025年10月に「タレントインテリジェンス」という構想を打ち出した。これはツールにAIを組み合わせることで、人事部門だけでなく、経営者やマネジャー、現場の社員までが人材データを公正な判断に生かせるようにする構想だ。4500社以上が使うサービスを、人事システムから意思決定を支えるツールへと変えようとしている。
そのための投資期間として、カオナビは株式の非公開化を選んだ。この先5年間をAIと人材データを軸に事業を広げる期間と考えている。
タレントマネジメントという言葉が日本で広がってから、すでに10年以上が経つ。企業には社員の評価や異動、スキルなどのデータがたまってきた。一方で、そのデータを人材育成やキャリア形成にどう生かすかは、企業ごとの課題として残る。可視化したデータから何を読み取るかは、結局のところ利用者次第だ。カオナビは、そこにAIを組み込もうとしている。
例えば、ある人材をどの部署に配置すればいいのか。また、欠員や新設ポストに対してどのような要件で採用を行うべきか。過去のデータをAIに分析させ、複数の可能性を示す。ただし、AIに最後の判断まで任せるわけではない。
「最後は人間が決めないといけません。ただ、これまで人間の直感に頼ってきた意思決定を、膨大なデータとAI活用によって再現性高く支えられるようになります」(佐藤氏)
AIに求めるのは、正解を出すことではない。人間だけでは見つけにくかった選択肢を増やし、判断材料を提示することだと佐藤氏は強調する。
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