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なぜ高収入の“超エリート集団”は一線を越えたのか プルデンシャル不祥事の深層:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

プルデンシャル生命の不祥事を受け、成果主義の弊害やガバナンス不全といった「制度」の問題について多く議論されている。しかし、どれほど厳格な仕組みを整えても、それを動かすのは人間だ。本記事では、同社の事例を手掛かりに、エリート集団が陥りがちな「心の動き」に着目する。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 プルデンシャル生命保険における長年の金銭詐取や違法勧誘問題に対し、外部弁護士による調査報告書が公表され、メディアや有識者による分析が相次いでいます。(参考:「再発防止策だけでは、変われない」 プルデンシャル生命が謝罪、30年以上続いた不正の構造的問題は)

 「過度な成果主義(フルコミッション制)の弊害だ」「部下が稼げば上司ももうかる仕組みゆえに、マネジャーが不正を黙認する『共犯構造』ができていた」「ガバナンスやコンプライアンス監査の形骸化だ」など──。

 どれもこれも、全くもって「ごもっとも」な分析です。報告書が示した再発防止策も、最低保証給の導入や契約後の顧客対応の評価引き上げ、営業推進と管理の分離、営業担当者と顧客の関係が閉鎖的にならない仕組みづくりなど、論理的に納得できるものでした。


謝罪をするプルデンシャル生命保険 代表取締役社長の得丸博充氏ら(出所:編集部撮影)

 しかし、問題の本質はそれだけでしょうか。どんなに「制度」を徹底しようとも、どんな「仕組み」を埋め込もうとも、その中にいるのは「人」です。生身の人間は、ときに論理を超えた行動に走る。どんなにハード面・ソフト面を整えようとも、網の目をいとも簡単に潜り抜けてしまうのが「人」です。

 今回の事件に限らず、これまでも不祥事や事故が起きるたびに、私たちはハード面・ソフト面からさまざまな防止策を論じてきました。しかし、歴史が証明してきたのは「どれほど仕組みを固めようと、人がそこにいる限り想定外は起きる」という残念な真実でした。

 そこで今回は、制度論の先にスポットを当て、高い成果を求められるエリート集団の「心の動き」と、彼らが抱えがちな葛藤について、私なりの考察を述べてみたいと思います。

なぜ人は不正に走るのか? 「正しさ」がもたらす抵抗心理

 プルデンシャル生命保険は「選ばれたプロフェッショナルによるライフプランニング」という高い理念を掲げ、高度な採用と研修システムを誇っていました。

 しかし、人は「正しくあれ!」と強制されればされるほど、その正しさに息苦しさを覚え、心理的な逃げ場を失っていきます。そして、その正しさとは逆方向に走りたくなる。「心理的リアクタンス」(抵抗心理)というメカニズムです。


正しさとは逆の行動を取りたくなるという(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

 例えば『ロミオとジュリエット』の物語もこの構造です。そして、抵抗心理に過度なノルマやプレッシャーが重なったときに「正規のルールから外れた裏技」や「一線を越えた不正」への心理的ハードルが劇的に下がってしまうのです。

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