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なぜ三井住友は新店舗で「銀行名」を外したのか? 「富裕層100万人」を囲うSMBC融合の正体(4/4 ページ)

10月26日に開業した「SMBC Wealth吉祥寺」は三井住友銀行の店舗を改装した拠点だが、掲げた看板は銀行名でも証券会社名でもなく、SMBCグループの富裕層向け共通ブランドだ。銀行・証券・信託のどの顧客も、ここでグループの担当者に相談できる。三井住友フィナンシャルグループ(FG)が目指すのは、各社が協力し合う従来の「連携」ではなく、看板も店も商品棚も人材も一つにする「融合」。その狙いと背景とは?

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預金と運用の「両取り」 金利1.25%が変えた銀行の計算

 SMBCグループがここまで証券に寄せる理由は、リテール部門の収益構造にある。2025年度に預金で稼いだ収益は1921億円と、前年度から1268億円増えた。投資信託などの運用で稼ぐ粗利益の増加額は496億円で、預金の伸びはその2倍を超える。2024年3月のマイナス金利解除から5回の利上げで政策金利は1.25%になり、預金を集めれば利ざやが入る。銀行にとって預金そのものの価値が上がり、富裕層の預金は手放しにくくなった。

 ところが顧客の資金は運用に向かっている。家計が持つ投資信託は2026年6月末時点で前年から36.8%増えた(日銀資金循環。増加の大半は評価益)。預金を守るだけなら、運用に回る資金は銀行の外に出ていってしまう。グループ内に資金をつなぎ止めるためには、日興の商品を銀行の担当者が扱えるようにすることが必要だった。事業計画も両面作戦で、2029年3月までに運用資産と外貨預金の残高を23兆円から28兆円へ増やし、預金残高も3兆円積み増す。

 SMBC WealthでSMBCグループは、銀行が担当者と店という顧客との接点を持ち続け、商品と運用の機能は証券に寄せる役割分担を選んだ。業法上の銀行と証券の区別はそのまま残るが、顧客からは、看板、店、棚、担当者のどこにも銀行と証券の境目が見えにくくなる。「銀行でも証券でもない店」は、その役割分担が最も分かりやすく表れた。

 株式の仲介が始まれば、銀行の対面窓口は日興の対面チャネルとしての役割も担う。開始時期は公表されていない。時事通信は5月、政府が2026年度中に銀証ファイアウォール規制の緩和の検討を始める方針だと報じたが、個人顧客が対象に入るかは分かっていない。入れば同意取得の手間が減り、他のメガバンクも同じ形を選びやすくなる。どちらに転んでも、富裕層をめぐる競争の単位は、業法で分かれた銀行・証券・信託の各社から、グループ全体へ移りつつある。上村氏が競争力の源泉に挙げたのも「グループの総合力」だった。

筆者プロフィール:斎藤健二

金融・FintechとAIを取材するジャーナリスト。アイティメディアでテクノロジー媒体とビジネス媒体の創刊編集長、取締役を歴任し、2023年に独立。技術と事業の両方の現場を見てきた経験から、AIや金融サービスを経営視点で取材する。会社四季報では上場企業の業績取材も手がける。


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