初めてお酒を飲んだあの時から、もう何年がたったのだろう――美味いかどうかも分からず、大人な自分に酔ってみたくて口にしたウイスキー。つぶれてしまったあの店で、友人や恋人が決まって注文したカクテル……。日々のスパイス、上質な安らぎ、時に恥ずかしい失態も交えつつ、さまざまなお酒が人それぞれの歴史を彩ってきた。 そして、お酒そのものにも、人や風土、文化の歴史が刻まれている。いわば、お酒を飲むことは「時の流れ」を飲むということ。その背景を知ることで、それまでと違った味わい方ができるかもしれない。 |
ウイスキーは、ゲール語で「生命の水」を意味する“ウィシュケ・ベァハ”がその名の語源。ウイスキーがいつ頃から飲まれていたかを断定するのは難しいが、文献としては1172年、イングランド王ヘンリー2世がアイルランドへ侵攻した際に農民たちが「ウスケボー」を飲んでいたという記録が残されている。また、1494年のスコットランド王室財務省の記録には「修道士ジョン・コーに8ボルのモルト(麦芽)を与えてアクアヴィテ(ラテン語で「生命の水」)を造らせた」という一節がある。 |
とはいえ、ウイスキーの重要なポイントである「樽熟成」が行われるのは、さらに後の時代になってから。18世紀初頭にイングランドと合併したスコットランドでは、重税から逃れるように密造酒が流通し、徴税官の目を避けるため密造ウイスキーは空き樽に詰められるようになる。この苦肉の策によって、樽の成分の溶出や酸化などさまざまな反応がウイスキーにもたらされた。こうして、熟成を経た琥珀色の“生命の水”が生まれたのである。 そして現在、ウイスキーは世界各地で愛され、スコットランド、アイルランド、日本、カナダ、アメリカのウイスキーは“世界5大ウイスキー”として数えられている。では、ウイスキーの定義とはなんだろう? |
ブランデー、バーボン、スコッチとお酒の種類を聞いたとき「どれがウイスキー?」と迷う人もいるかもしれない。ウイスキーは蒸留酒(スピリッツ)の一種で、穀物を原料とし、木樽熟成を経たものを指す。ブランデーは原料が果実(主にブドウ)なのでウイスキーには分類されない。バーボンはトウモロコシを主な原料としたアメリカのウイスキー、スコッチはスコットランドで造られたウイスキーのこと。 さらにウイスキーの中でも、単一の蒸留所で造られたモルトウイスキーを他のウイスキーとブレンドせずにボトリングしたシングルモルトウイスキーは、蒸留所の個性がそのまま風味に現れる。ブランドごとに変わる味、香り、色を確かめながら、そして、そのウイスキーが生まれた土地を想像しながら、上質な一杯を楽しんでみよう。 |
スコッチ・ウイスキーの銘柄を見回すと、ゲール語で「谷」を意味するグレンという名に多く出会うが、「ザ・グレンリベット」もそのひとつ。スコットランドの中でも多くの蒸留所が集まるスペイサイドで、政府公認第1号の蒸留所として認められた由緒あるブランドだ。マザーウォーター(仕込みに使う水)には蒸留所後方に湧き出る、ミネラル分に富んだ硬水“ジョージーの湧き水”を使用している。 今回紹介する「ザ・グレンリベット ナデューラ」は、その中でもモルト本来の味わいを最大限生かした一品。樽からしみ出す成分など、白濁の原因となる成分を取り除くチル・フィルタリング(冷却ろ過)を施さず、さらに加水を行わず樽出しのアルコール度数のままでボトリングするカスク・ストレングスを採用することで、豊かな旨み、ナチュラルな味わいにこだわっている。 |
ちなみにザ・グレンリベットでは、イベントやWebなどを通して同ブランドの知識を深められる「ザ・グレンリベット コニサー・クラブ(https://www.theglenlivet.jp/connoisseur/)」を展開しているので、気になる人はチェックしてみよう。 |
アイルランドの西側、大西洋の荒波が打ち寄せ潮風が吹き抜けるアイラ島の厳しい気候の中で熟成されるアイラモルト。風土や蒸留所の個性が際立つシングルモルトの中でも特別なインパクトを放っている。麦芽を乾燥させる際にたき込むピート(泥炭)は、ウイスキーのフレーバーを左右する要素の1つだが、アイラのそれはひときわ強烈で、薬品を思わせるヨード香や潮っぽさなど、クセのある味わいが愛好家の心をつかんで離さない。 そのアイラモルトの代表格「ラフロイグ」は、ゲール語で「広い湾の美しい窪地」の意味を持つ。伝統的なフロアモルティングで、スコップを用いモルトマンが手作業で大麦をかき混ぜながら発芽状態を調節し、専用の採掘場から採られた良質なピートをたき込むことでピーティー&スモーキーな味わいを創り出している。チャールズ皇太子が愛飲していることでも有名。 |
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取材・文/+D Style編集部
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