歴史を知って、楽しむお酒特集 語れるお酒、初級編(3/3 ページ)

» 2008年07月25日 09時30分 公開
[ITmedia]
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  • 熟成した「生命の水」 ウイスキーを知る
  • 個性の裏に、歴史あり スピリッツの魅力
  • 幻の“緑の妖精” アブサンに酔う
幻の“緑の妖精” アブサンに酔う

 リキュールは、蒸留酒にハーブや果実などのエキスを加え、糖類などで整えた混成酒。味はもちろん、多彩な香りと色のバリエーションを持ち、お菓子の材料にも使われたりとさまざまな楽しみ方がある。古代ギリシャの時代にはワインに薬草をつけ込んだものが薬として使われていたというが、蒸留酒にエキスを加えた現在のリキュールは中世のヨーロッパで広まった。錬金術師たちが“生命の水”と称した蒸留酒は、薬用やアンチエイジングの効果を期待されていたわけだが、その効能をより高める方法として薬草などの成分が添加された。

 リキュールという言葉の語源は、ラテン語で「溶け込ませる」という意味を持つ「リケファケレ(Liquefacere)」が訛ったものだと言われている。

リキュールPick-up! 緑の妖精「アブサン」のイロハ

 さて、あまたのリキュールがバーの棚を彩る中で、今回特に紹介したいのが「アブサン」。別名「緑の妖精」とも呼ばれ、19世紀のヨーロッパで社会現象となり、世紀末の芸術家たちを魅了、さらには製造や流通が禁止された、「幻の酒」とも言えるリキュールである。

 18世紀の終わりごろ、ピエール・オルディネールという医師が鎮痛剤としてアブサン酒をスイスで処方したのが始まり。そのレシピを買い取ったデュビエ公爵とその娘婿であるアンリ・ルイ・ペルノーが1797年、商品としてのアブサンを作り出す。そして1805年、フランスのポンタルリエにペルノ・フィス社が創設され、「ペルノ」のブランド名とともにアブサンはフランス中に広まっていった。

「ペルノ・アブサン」

 現在も「ペルノ」というリキュールは販売されているが、これはアブサンの代用品として登場したアニス酒というリキュールで、当時の「ペルノ」とは成分が違う。というのも、アブサンは、材料の1つであるニガヨモギに含まれる成分(ツヨン)が幻覚などの向精神作用をもたらすとして問題視され、禁制となったからだ。1915年、フランスではアブサンが禁止され、ペルノ・フィス社も強制的に閉鎖されることとなった。

 こうして「幻の酒」となりつつあったアブサンだが、1981年にWHOによってツヨンの濃度が10ppm以下のものに限り解禁が認められ、合法的な復活をとげた。もちろん日本でもリキュールの1つとして気軽に手に入る。また2001年にはペルノ社から、かつてのペルノのレシピを参考に作られた「ペルノ・アブサン」が登場した。

 19世紀末のフランスのカフェで、ピカソ、ゴッホ、モネ、ロートレックなど時代を代表する芸術家達に愛飲されていたアブサン。彼らの感性にささやいた“緑の妖精”の言葉を聞くつもりで、ボトルの口を開けてみてはいかがだろう? 19世紀の活気あるカフェを想像しながら、ゆっくりと味わってみて欲しい。

アブサンの“粋”な飲み方

 スタンダードな水割り、そこにレモンを加えたり、クラッシュアイスとフレッシュミントで仕上げたり――最初は、そんなライトな楽しみ方で飲んでみよう。けれどもう少し“濃く”楽しんでみたい人に、伝統ある飲み方を紹介しよう。ただ、口当たりの良さに対してアルコール度数はそれなりなので、要注意。

アブサンの“粋”な飲み方 01
アブサンの“粋”な飲み方 02

取材・文/+D Style編集部



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