“全世界失明”が見せる人の心――映画「ブラインドネス」完成報告+D Style News

» 2008年08月15日 00時20分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 左から伊勢谷友介さん、フェルナンド・メイレレス監督、木村佳乃さん

 今年11月に日本での公開を控える映画「ブラインドネス」の完成披露試写会が8月14日に東京都内で行われ、作品を手がけたフェルナンド・メイレレス監督と、出演した伊勢谷友介さん、木村佳乃さんが舞台挨拶で登場した。

 ある日突然、目の前が真っ白になり視力を失ったひとりの日本人男性。彼の発病をきっかけに、原因も治療法も分からないまま世界各地で人々が失明していく――ノーベル文学賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説「白の闇」を原作に、人間の本性や心の闇を描いたサスペンス映画「ブラインドネス」は、第61回カンヌ国際映画祭でオープニング作品選出/コンペティション部門出品を達成した注目作だ。


photophotophoto 「心に残る、深い作品です」と同作を語る木村さん。「この映画で初めて盲目の役を演じたんですが、感じることがたくさんありました」と、撮影を振り返る
photophotophoto メイレレス監督を尊敬し、憧れているという伊勢谷さん。共演したガエル・ガルシア・ベルナルさんの演技力に脱帽したエピソードも明かした

 「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」でメガホンを取ったメイレレス監督の下、カナダ、ブラジル、日本の合作というスタイルで制作され、アメリカ出身の女優ジュリアン・ムーアさん、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で注目が高まったメキシコ出身のガエル・ガルシア・ベルナルさんなど、国際色豊かな俳優陣が出演している。

 劇中では最初に失明した日本人男性役を伊勢谷さんが、その妻役を木村さんが演じているが、実は日本人という設定は原作にない。メイレレス監督は「そもそもこのカップルを日本人にしようと考えたのは、この作品が特定の地域や人種の物語ではなく、“人類”の物語だったからなんだ。だからキャストには、白人も黒人もラテン系の人も、もちろんアジア系の人も採用しようと考えていたよ」と語る。さらに2人の印象について「夫婦役にはエレガントで洗練されている人を望んでいたんだけど、見ての通り2人ともその要素を持っているよね。それと実際に2人に会った時、何か通じ合うものを感じたのも、配役の決め手だった」とコメント。

photophotophoto 作品のシリアスなテーマと対照的に、明るいムードの3人

 会見中は終始笑顔を見せていたメイレレス監督だが、監督の印象を聞かれた伊勢谷さんは、「(撮影中も)このままでいらしゃるんですよ、難しくなることがないので、こちらからも提案ができたりして、夫婦が話す日本語の部分を書かせていただいたり……身に余る幸せでした」と感激の様子を見せた。木村さんは、現場で印象に残ったことを聞かれ「ジュリアン・ムーアに感銘を受けました。強くて優しい人とはまさに彼女のこと。女優としてはもちろん、いち女性としても強く、優しくて、憧れるところがたくさんありました」と語った。

 “全世界、失明。”という衝撃的なキャッチコピーが踊る同作だが、メイレレス監督は「もしこれが典型的なアメリカンフィルムであれば、伝染病が発生して、それがどうしてなのか、どう治療すればいいか、どうやって世界を救うのかという映画になっていたと思う。けど、この作品において“目が見えない”というのは、ひとつのメタファーなんだ」と話す。「人間がいかに自分や他人、環境のことを“見えていないか”を描いている。そして本当に“見る”ために、我々はどれくらい苦労をしなければいけないのか。それがこの映画で描かれる“旅”なんだ。そういった観点で、見てもらえればうれしいよ」(メイレレス監督)

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