今から30年前、テレビで放映された「ハウスククレカレー」のCMで軽快に流れていた「おせちもいいけどカレーもね」の曲。実際、カレーに使われるスパイスは、正月休みでなまった体を新たな1年に向けてリセットする作用がある。唐辛子は自律神経を刺激して脂肪を燃焼させるため、デトックスに最適。ツヤ肌に欠かせないビタミンCも豊富。カレーの着色に使われるターメリックはウコンとも呼ばれ、肝臓に効くのは広く知られている。甘い香りと強くしびれる刺激を持つクローブは胃腸の働きをすっきり促すし、クミンは腹部の膨張感を解消するほか、滋養強壮・疲労回復などの効果がある。 スパイスたっぷりのカレーは、12月初めの忘年会シーズンから続く食べ過ぎた身体にピッタリのメニューだ。それでは2008年話題になった数あるカレー店の中でも、知っているとちょっとツウになれる、わざわざ足を運ぶ価値のある3店をご紹介しよう。 |
マハラジャ、天竺屋、アジャンタ、ガンガーパレスなど名だたるカレー店でインド料理の基礎を学んだ塚本善重氏。1997年に自分のお店を構えた際、追究したテーマは“インド料理のレシピを日本の食材に置き換える”だった。和の食材をさりげなく隠し味として滑り込ませる技で多くの著名人をトリコにし、今では店内の壁はサインで埋めつくされている。中でも酸味のスパイス「タマリンド」の代わりに梅干しを使った「噂の!鶏肉の梅カレー」は多くのファンを持つロングセラーだ。 |
今回ご紹介するのは、2008年11月に新メニューとして加わった「華麗なる!鶏ひき肉とナンコツのキーマカレー 梅干し添え」。本日のカレーとして不定期に出していたものを、人気漫画「華麗なる食卓」30巻の単行本表紙に起用されたのをきっかけに定番メニューに。ジューシーでツユだく、南インドのキーマをベースに、クローブ・カルダモン・シナモン・マスタードシードが香りたつ。細かく砕いた鶏ナンコツのコリコリした食感が、なんとも言えない軽快なアクセントになっている。 スパイスに一晩漬け込んだ鶏肉を、酢でマリネにした「チキンピクルスとパパード」は、思わずビールが恋しくなるはず。南インドのソウルフードである「ラッサム」を、豆腐・梅干し・昆布・シソ・ゴマなど和の食材でアレンジした「和ッサムスープ」も斬新なアイデアメニュー。今の季節は仕上げに柚子がひとかけ乗っているのが心憎い。 |
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3年半で実に48カ国を旅して歩いたという伊藤一城氏が2003年、地元の押上にオープンさせたカレー店。築50年の木造アパートを1から改造し、味のある一軒家としてよみがえらせた。 特筆すべきは夜のコース。日本人向けに改良を重ねて仕上げられた南インドのカレーを中心に、イタリアン前菜とデザートが楽しめる。 「前菜盛合せ」は本当にカレーを食べに来たのだろうか、と頭の中で確認したくなるほど本格的なアンティパスト。キッシュ、リエットと並ぶ中にサブジやアチャールといったインド料理も違和感なく溶け込んでおり、所々にクミンやカルダモンがエッセンスとして使われている。 数種類から選べるカレーは「ラッサムスープ」と「牡蠣カレー」がオススメ。ラッサムは酸味のあるトマトベースのスープで、強烈な辛さが魅力の南インドの日常食。牡蠣カレーは小麦粉をまぶし、いったんバターで焼いたカキをバターごとカレー鍋に投入。カツオ節と醤油とガラムマサラが弾ける季節カレーだ。 どっしりしたテーブルに配置されたロウソクの光や、ライトアップされた庭に見える小さな花々。錦糸町から半蔵門線でわずかひと駅というアクセスながら、バカンスで遠方の地に訪れていると錯覚するような、ゆったりリラックスした気持ちになれる癒し空間である。 |
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めでたい時は“鯛”と相決まっているもの。五反田で話題の「ダ・カーポ」は、そんじょそこらのたい焼とは違った、遊びゴコロ満載の仕掛けが随所に散りばめられている。 そもそもこのお店、中古CD/LPと輸入雑貨を扱うジャズと雑貨の店。ところが軒下には見事に染め抜かれた「たい焼」の暖簾(のれん)が張られ、レジの場所でたい焼を焼くというユニークな空間が広がる。 基本の「たい焼」も当然美味であるのだが、今回ご紹介する「冬の鯛うどん」(うどんは入っていません)は、受け取った瞬間スパイシーな香りに包まれる、驚くこと間違いなしのカレー鯛焼きである。 |
この鯛うどん、なんでもクミンシード、クミンパウダー、カルダモン、クローブの4種のスパイスを使い、12もの工程を経て作られているとか。1匹のたい焼でこれだけの味と香りと変化を楽しめることに、心底驚くはず。無粋な種明かしはしないけれど、1つだけ。スパイスの波状攻撃に皆、顔を真っ赤にして食べるのだ。 |
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取材・文/華麗叫子
編集/似鳥陽子
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