昨年と一変“祭り”の予感 「どうなる? 2009年アカデミー賞」特集 2009年アカデミー賞(2/3 ページ)

» 2009年02月16日 10時00分 公開
[ITmedia]
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オスカーは誰の手に? 目が離せない「この人」
ブラッド・ピット――「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(主演男優賞ノミネート)

 「バベル」「オーシャンズ13」「ジェシー・ジェームズの暗殺」など、シリアスな作品からエンタメな作品まで、幅広く演じているブラッド・ピット。でも、あえて彼の代表作を挙げるなら「セブン」と「ファイト・クラブ」だろう。いずれもデビッド・フィンチャーの作品であり、2人のコラボ作品は外れナシ。

 本作では、特殊メイクに4時間以上かけ、ヨボヨボの老人姿から、「リバー・ランズ・スルー・イット」のころを思わせる“全女子ウットリ”の20代までを演じ分けている。作品の評判の良さと興行的成功を考えれば、ピットの受賞は大いにありえる。

ブラッド・ピット

 コーエン兄弟の最新作「バーン・アフター・リーディング」(4月24日公開)も控え、今年はピットの当たり年になりそう。ちなみに、こちらは筋肉バカのトレーナーに扮し、かなりのぶっ飛び具合を披露している。

ミッキー・ローク――「レスラー」(主演男優賞ノミネート)

 80年代に活躍したおやじレスラーのランディ(ローク)は、今でも現役を続けていた。しかし心臓発作を起こし、引退を迫られる。それを機に、疎遠になっていた娘、心を寄せてくれるストリッパー(マリサ・トメイ)、そして自分の将来のことを考え始めるが……。

「レスラー」

 ミッキー・ロークが魂を込めた人間ドラマ。ヴェネチア映画祭金獅子賞に続き、ゴールデングローブ主演男優賞もゲット。「あの栄光をもう一度」という思いを胸にリングに立つランディは、80年代はセックスシンボルとして輝いていたローク自身の俳優人生と重なる。ひとまずミッキー・ロークの復活を喜びたい。

 監督は「レクイエム・フォー・ドリーム」「ファウンテン 永遠につづく愛」のダーレン・アロノフスキー。マリサ・トメイも助演女優賞にノミネートされている。

INFORMATION

配給:日活(2009年初夏公開)

アンジェリーナ・ジョリー――「チェンジリング」(主演女優賞ノミネート)

 1928年のアメリカで実際に起きた子供の失踪事件をクリント・イーストウッドが映画化。行方不明になった9歳の息子の捜査を依頼したシングルマザーに、警察が突き出したのは明らかに別の少年。彼女は「私の子供ではない」と訴え続けるが、警察は取り合わないばかりか、彼女を異常者とみなし、精神病院に送ってしまう。

 ブラッド・ピットと夫婦でエントリーされているアンジェリーナ・ジョリー。実生活でも6人の子供の母親である彼女は当初、子供を失うという役に難色を示したが、ピットの勧めもあり、出演を決めたそうだ。

 「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレット、「レイチェルの結婚」のアン・ハサウェイなど、主演女優賞は主演男優賞に並ぶ激戦区。華麗なる女たちの戦いに注目だ。

「チェンジリング」01
「チェンジリング」02
INFORMATION

配給:東宝東和(2009年2月20日公開)
公式サイト:http://www.changeling.jp/

アン・ハサウェイ――「レイチェルの結婚」(主演女優賞ノミネート)

 「羊たちの沈黙」「オペラ座の怪人」ののジョナサン・デミ監督が、ドキュメンタリータッチで家族の問題をあぶり出すドラマ。姉レイチェルの結婚式に出席するため、ドラッグ更正施設から一時帰宅した妹のキム。問題児のキムを、家族は腫れ物にさわるように扱う。それを敏感に察知した彼女は……。

 どんな家族にも大きなドラマが潜んでいる。緊張感漂う会話の応酬はヒリヒリするような痛さ。「プリティ・プリンセス」「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイが演じるのは、もちろん優等生の姉、と思いきや、意外にもトラブルメーカーの妹のほう。新境地を開拓したともっぱらの評判で、ゴールデングローブ賞にもノミネートされた。受賞は厳しそうだが、キャリアアップには確実につながった。今後の活躍も大いに期待したい。

「レイチェルの結婚」
INFORMATION

配給:ソニー・ピクチャーズ(2009年4月公開)
公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/rachelgettingmarried/

デビッド・フィンチャー――「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(監督賞ノミネート)

 1992年の「エイリアン3」で長編監督デビューを飾ったデビッド・フィンチャー。「セブン」の世界的成功で注目を集める。その後も「ゲーム」「ファイト・クラブ」「パニック・ルーム」とコンスタントに撮り続け、2007年の「ゾディアック」はワシントン・ポスト誌やエンターテイメント・ウィークリー誌など各媒体の年間ベストテンに選ばれた。

 今までは犯罪やバイオレンスを描いてきたが、今回は方向転換。ドラマの名手であることも証明し、フィンチャーのキャリア上のひとつの転機になったことは間違いない。アカデミー賞ノミネートは初。ライバルは「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル。

デビッド・フィンチャー
ダニー・ボイル――「スラムドッグ$ミリオネア」(監督賞ノミネート)

 「トレインスポッティング」で一躍注目を集めたイギリス人監督。その後ハリウッドに招かれて、「普通じゃない」「ザ・ビーチ」を撮る。レオナルド・ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ」で撃沈するも、「28日後...」は“全力疾走のゾンビ”の先駆けとして信者を獲得し、劇場・DVDともにヒットした。

 「スラムドッグ$ミリオネア」はダークホース的な存在から、アカデミー賞前哨戦をほぼ総なめ状態で、大本命に躍り出る。主人公が警察に追われて街を逃げまくるオープニングや、トイレネタなどのキツいジョークはまさにインド版「トレインスポッティング」。若さと躍動感に溢れていて、ダニー・ボイル完全復活をアピール。いまだアカデミー賞とは無縁だが、今回は受賞の可能性が高い。

ダニー・ボイル

取材・文/本山由樹子



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